第15話 理解
その後、俺たちは一時的に暴走者の発生が収まったため、平穏な日々に戻っていた。しかし、桐生の言葉や彼女の力への向き合い方が、俺の中に何かを芽生えさせた。彼女が自分のコンプレックスと向き合い、それを受け入れて戦う姿は、俺自身が「正義」という力にどう向き合うべきかを考えさせられるものだった。
「俺も……自分の力をもっと理解しなきゃいけないな」
俺は「正義」という名の力が持つ重みを、改めて感じていた。この力はただの暴力の免罪符ではない。自分が守るべきもののために使うべき力だということを、少しずつ理解し始めていた。
仙台は相変わらず、どんな場所にも3秒で正確に到達する能力を使って、訓練や任務をこなしていた。彼の力もまた、チームの中で欠かせない存在になっている。そして桐生も、彼女の目の力を以前よりも積極的に使うようになり、その視覚を活かして戦闘や捜索で多大な貢献をしていた。
だが、そんな平穏は長くは続かなかった。
ある日、俺たちの元に、以前とは比べものにならない規模の暴走者の集団が発生したという報告が入った。それは「部分強化者」の暴走というよりも、誰かが意図的に力を引き出し、操っているような不気味さが漂っていた。
「これは……ただの暴走じゃないな」
仙台が緊張した声で呟いた。俺もその場の空気に不安を感じていた。この戦いは、これまで以上に困難であることがすぐにわかった。
現場に到着すると、目の前には圧倒的な力を持つ暴走者たちが集結していた。通常の部分強化者の暴走とは異なり、彼らの動きには明確な指示や統制が感じられた。誰かが彼らを操作している。そんな気配を感じた俺は、すぐに状況を把握しようとした。
「仙台、3秒で偵察に行けるか?」
俺が指示を出すと、仙台はすぐに応じた。
「ああ、まかせろ。3秒で周囲を確認して戻る」
彼はすぐに周囲の高台に移動し、状況を確認して戻ってきた。その間わずか3秒。正確無比な動きに感心しながらも、俺たちは次の行動を考え始めた。
「暴走者たちは明らかに操られている。誰かが遠くから指示を出しているようだ。だが、すごい数だ……全員を倒すには限界がある」
仙台が苦い顔で状況を説明する。暴走者の数は数十人、下手をすればそれ以上。すべてを無力化するには、こちらの戦力が足りない。
「私の目で、誰が操っているのか見極めるわ」
桐生が一歩前に出て、再び彼女の目を強化する準備を始めた。彼女の目が鋭く光り、その周りに浮き出る血管が強さを増していく。だが、彼女はもうその変化を恐れていなかった。
「敵は……あそこ、あの建物の中にいるわ」
桐生の力によって、操っている者の正確な位置が特定された。俺たちはすぐに行動に移ることを決めた。
「よし、仙台、あの建物に3秒で突っ込んでくれ。俺と桐生も後に続く!」
仙台は頷き、3秒で目標地点に突進。俺たちもその後を追って、操っている者の正体を突き止めるために動き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます