第13話 醜さと強さ

翌日、俺は桐生に直接話しかけてみることにした。訓練場の片隅で彼女は一人、黙々と瞑想しているように見えた。


「桐生、少し話せるか?」


彼女はゆっくりと目を開け、俺を見た。いつもの冷静な彼女だが、その背後には何か隠された感情があるように感じた。


「……何か用?」


俺は彼女の瞳を見つめたまま、意を決して口を開いた。


「お前の目の力、すごいんだろ? でも、使うのが怖いのか?」


桐生は一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに目をそらした。そして、しばらく沈黙が続いた後、ぽつりと口を開いた。


「……そうよ。私の目の力は確かに強い。暗闇でも、何キロも離れたものでも見える。だけど、その力を使うと、私は醜くなる。目の周りの血管が浮き出て、顔が変わってしまうの。まるで別人みたいにね」


彼女は言葉を詰まらせ、続けた。


「それが嫌なのよ……どんなに力を発揮しても、周りの人は私を見て怖がる。誰も私を直視しない。力を使えば使うほど、自分が遠ざかっていく気がするの」


彼女の言葉に、俺は彼女の孤独を感じた。強さと引き換えに、自分の存在を否定されるような感覚——それがどれほど辛いものなのか、少しだけ理解できた気がする。


「でも、その力があれば、俺たちの戦いがもっと有利になるはずだ。お前の力はただの目の強化じゃない。正確な判断ができるその視覚で、俺たちをサポートしてくれ。顔のことなんか、気にするな。俺たちは……そんなこと、気にしない」


俺の言葉に、桐生は驚いたように俺を見つめた。しばらくして、彼女は少しだけ微笑んだ。


「ありがとう。でも……私はまだ、その勇気が出ないわ。自分を見せるのが怖い」

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