第12話 強化部分
その夜、静かな訓練場で、俺と仙台は軽い訓練を終え、帰ろうとしていた。桐生もまたそこにいたが、彼女は何か思いつめたような表情を浮かべていた。
「桐生、大丈夫か?」
俺が声をかけると、彼女は少し驚いたように顔を上げた。しかし、その瞳の奥には、いつもと違う陰りが見えた。
「うん……ただ、少し考えていただけ」
彼女の言葉は短かったが、その態度には明らかに何かが引っかかっていた。俺はそれ以上追及することはせず、しばらくその場を離れた。だが、後ろから仙台が小声で囁いた。
「桐生にはコンプレックスがあるんだ。あいつ、目を強化できる能力を持ってるけど……その力を使うと、顔が変わってしまう。特に目の周りが醜くなるんだ」
「醜く……?」
俺は少し驚いて仙台を見つめた。
「目の強化って、視覚がすごく鋭くなるんだ。暗闇でも、遠く離れたものでも、細部まで全部見える。だけど、その力を使うと、目の周りの血管が浮き出て、顔つきが変わってしまうらしいんだ。それが彼女のコンプレックスで、普段はあまりその力を使いたがらない」
仙台の説明を聞いて、俺は桐生の内面にある苦悩が少し理解できた。強力な力を持ちながらも、その代償として自分の容姿が変わってしまう。彼女がそれをどれほど嫌がっているのか、少し想像できた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます