第12話 強化部分

その夜、静かな訓練場で、俺と仙台は軽い訓練を終え、帰ろうとしていた。桐生もまたそこにいたが、彼女は何か思いつめたような表情を浮かべていた。


「桐生、大丈夫か?」


俺が声をかけると、彼女は少し驚いたように顔を上げた。しかし、その瞳の奥には、いつもと違う陰りが見えた。


「うん……ただ、少し考えていただけ」


彼女の言葉は短かったが、その態度には明らかに何かが引っかかっていた。俺はそれ以上追及することはせず、しばらくその場を離れた。だが、後ろから仙台が小声で囁いた。


「桐生にはコンプレックスがあるんだ。あいつ、目を強化できる能力を持ってるけど……その力を使うと、顔が変わってしまう。特に目の周りが醜くなるんだ」


「醜く……?」


俺は少し驚いて仙台を見つめた。


「目の強化って、視覚がすごく鋭くなるんだ。暗闇でも、遠く離れたものでも、細部まで全部見える。だけど、その力を使うと、目の周りの血管が浮き出て、顔つきが変わってしまうらしいんだ。それが彼女のコンプレックスで、普段はあまりその力を使いたがらない」


仙台の説明を聞いて、俺は桐生の内面にある苦悩が少し理解できた。強力な力を持ちながらも、その代償として自分の容姿が変わってしまう。彼女がそれをどれほど嫌がっているのか、少し想像できた。


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