第8話 試練

「お前……その力を使ったのか?」


現場に駆けつけた桐生と仙台が、息を切らしながら俺の元にたどり着いた。桐生は俺の左腕を見つめ、静かに言った。


「それが……『正義』の力なのね」


俺は頷くしかなかった。だが、心の中で何かがくすぶっている。正義の名のもとに暴力を振るうこと、それが本当に正しいのか? 暴走者を倒したはずなのに、心に残るのは達成感ではなく、空虚感だった。


仙台が一歩近づき、俺に肩を叩いた。


「お前の力は強い。でも、その力を使うたびに何かを失っていくように見える。俺は……お前がそうなるのは嫌だ」


彼の言葉に俺ははっとした。力があれば何でも解決できるわけではない。それを理解していながら、俺はその力に頼り始めている。


「でも、もしまたこんな状況が起こったら、俺は……どうすればいいんだ?」


仙台は少し考え込んだ後、静かに言った。


「俺は、足に宿る力を持ってる。速く走ったり、高く飛んだりすることができる。でもそれは、誰かを守るために使いたいんだ。お前も、自分の“正義”が本当に何のためにあるのかを考えるべきじゃないか?」


彼の言葉が胸に響いた。俺の「正義」は、誰かを守るためのものなのか? それとも、ただ暴力を行使するための言い訳に過ぎないのか? その答えはまだ見つからないが、今まで以上に深く考える必要があることは分かっていた。


桐生が最後に一言、静かに言った。


「“正義”という名前が付いているからこそ、その力には責任が伴う。お前は、その重みをどう背負うのか、自分で決めるしかない」


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