第6話 頭にふと浮かんできたんです

「お前の力……『正義』というのか?」


加賀は驚いたような目で俺を見つめた。俺は頷きながら、自分の力の真の意味を、

彼に明かした。


「おそらく。俺の左腕に宿る力は“正義”だ。この腕で行使するどんな暴力も、どんな破壊も、罪の意識に触れない。つまり、どんな行動をしても罪に問われない……」


その言葉を聞いた加賀も、仙台も、そして桐生も、一瞬黙り込んだ。この力が持つ意味は、単なる強化とは違う。暴力を正当化し、無制限に振るうことができる力だということを、皆が理解したのだ。


「だが、その力……危険すぎる。お前はその力を本当に使いこなせるのか?」


桐生が静かに問いかけてくる。彼女の目は真剣で、まるで俺の内面を見透かしているかのようだった。俺は少し戸惑いながらも、答えを探していた。


「正直、俺自身もこの力をどう扱っていいか分からない。確かに、どんな行為をしても法的に許される。でも……それは本当に“正義”なんだろうか?」


自分の能力の名が「正義」だとは皮肉だ。正義という言葉の裏には、必ずしも善があるわけではない。俺はこの力を手にした瞬間から、その本質について考え続けてきた。だが、今もまだその答えは見つかっていない。


仙台が口を開いた。


「でも、もしその力があるなら、俺たちが対峙している“暴走者”たちを止められるんじゃないか? お前なら、暴力に訴えても何も失わないんだろう?」


仙台の言葉に、俺は再び沈黙した。確かに、この力を使えば誰かを傷つけても罪に問われない。だが、それは本当に自分の望むことなのか?



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