第4話 仲間との出会い

放課後、いつものように家に帰ろうとしたその時、突然、見知らぬ女子生徒が俺の前に立ちはだかった。長い黒髪と鋭い瞳を持つ彼女は、まるで俺のすべてを見透かしているかのように、冷静な視線を送ってくる。


「あなた……部分強化者ね?」


俺は動揺しながらも、なんとか平静を保とうとした。


「……誰だ、お前?」


彼女はふっと笑い、静かに言った。


「私は、あなたと同じよ。部分強化者——そして、この力を制御するための方法を知っている」


その言葉が、俺の心に新たな希望と不安をもたらした。


翌日、俺は彼女、桐生(きりゅう)葵と名乗るその女子生徒に、近くのカフェで話を聞くことになった。カフェの静かな空間で、俺は少し緊張しながらも、昨日の出来事と彼女が知っている「部分強化」の話について耳を傾けた。


「私もあなたと同じ、“部分強化”の力を持っている。でも、単純に強い力を得ただけじゃないわ。この力には、危険な側面もあるの。暴走すれば、自分をも破壊する……」


彼女の言葉は俺が抱いていた不安をさらに大きくした。自分の左腕の力が制御できなくなる恐怖、それが現実に起こりうると知った今、どうしていいか分からなかった。


「でも、力を制御する方法があるなら、それを教えてほしい。俺は……このままじゃ、いつか自分を壊すかもしれないんだ」


桐生は真剣な表情で頷き、口を開いた。


「一つ教えてあげるわ。“部分強化”の力は、ただ肉体を強化するだけじゃない。感情や意志がその力を形作る。そして、同じ力を持つ者同士、力を引き出し合うことができる……」


「引き出し合う?」


俺が疑問を投げかけた瞬間、カフェのドアが勢いよく開いた。そこに立っていたのは、昨日廃工場で俺を助けてほしいと叫んだクラスメイト、仙台拓海だった。


「お前も……その話を聞いてたのか?」


「いや、たまたま通りかかっただけだよ。でも、偶然って怖いな」


仙台は苦笑しながら俺の隣に腰掛けた。彼は俺の左腕の力を目撃している数少ない人間で、俺が「部分強化者」だということも知っている。だが、彼が口を開いたその瞬間、俺は彼もまた、普通ではないことに気づいた。


「お前も、力を持ってるんだな……」


俺の言葉に、仙台は無言で頷いた。そして、意を決したように彼の足を机の下から出した。何かが違う——その時、俺は彼の足が異様なエネルギーを放っているのを感じた。


「実は、俺も同じなんだ。足の部分強化を持ってる。お前が見たあの時、俺は走って逃げるつもりだったけど……自分の力に驚いてしまって動けなくなったんだ」


仙台の言葉に、俺は驚きと共感を感じた。彼もまた、自分の力に悩み、恐れているのだ。


「足……強化されてるのか?」


「そうだ。俺の場合は足全体に力が集中する。瞬発力と跳躍力が尋常じゃないけど、それをどう使っていいか、まだ全然わからないんだ……ただ、このままだといつか自分も制御できなくなる気がして、怖いんだよ」


彼の告白に、俺は自分と同じ悩みを抱える者が近くにいたことに少しだけ安堵した。しかし、同時にこの力の危険性を改めて実感した。


「じゃあ、どうすればいいんだ?俺たち、暴走を止める方法を知るために、何をすればいい?」


桐生は静かに立ち上がり、俺たちを見据えた。


「まずは、あなたたちの力をもっと理解すること。自分の限界と感情がどこにあるのかを見極める必要がある。そのために、私が知っている“部分強化者”たちが集まる場所に行くべきよ。彼らはこの力を使いこなしている。そこには、同じように悩む者もいれば、すでに自分の道を切り開いている者もいる」


仙台は目を見開き、俺を見た。


「……行くしかないか」


俺は頷いた。ここで止まるわけにはいかない。自分たちの力を制御する方法を見つけ、そしてもっと強くなるために、俺たちは進むべき道を選んだ。


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