序章9 『理想郷にさよならを』




「大嫌いだ、化け物ども、、、。」

 

 目の前の、人の面を被った理解不能な怪物に吐き捨てる。


「な、、にそれ、、なんでそんなこと、、、言うの?」


 会話の流れからは予想もしてない言葉をたたき付けられて、少女は戸惑い、涙目となる。

 もうたくさんだ、そんな泣いている振り、いや、本心からなのは残念ながら痛いほどわかっている。

 それでも、あまりに乖離してしている彼女らの言動と価値観の不一致が腹立たしくてたまらない。


「なんで?今言ったこと聞いてなかったのか、なぁ?」


 あまりに先ほどの様子とは違う変貌具合でこちらの方によってくる青年の気迫に押され、少女は思わず後ずさる。

 なにか気に障ることでも言ってしまったのか。

 そう思い、口から謝罪の言葉を告げようと、


「あ、、あの、ごめんなさ、、」


「なんでもクソもないだろ!!そうやって、貶されただけで涙を流すお前が、この国の人間全員が!!失われた命に、記憶に、存在に!!価値を見いだせない、涙を流せないなら!!化け物じゃなくて、一体何だって言うんだよ!!!答えろ!!!」


 言葉を遮られ、あまりにも刺々しい彼のもの言いに、溜まっていた涙が零れ落ちる。


「何言ってるの、、化け物じゃないよ、、うぅ、、わかんないy・・・」


 少女が理解できない旨を伝えようとした瞬間、、


バゴォォォォォォォォォォォォォンンンンン!!!!!!!!!!!


 突如として、重い衝撃が一帯を襲う。

 風圧によって粉塵は舞い散り、収まってきていた視界を覆っていた砂埃を再びもとの散乱状態へと戻してしまった。

 だが、次に起こる暴風はそのすべてをこの場からかき消した。


「GYAAAAAAAAAAAAAOOOOOOOOYRAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」

 

 このヴィーグナの町全域に轟いたであろう大音量の咆哮。

 砂の粒は視界から消し飛び、ソレを起こした元凶の姿を現した。

 塵一つ無い広間に威風堂々たる佇まいでこちらを睥睨する漆黒の怪物、黒蛇だった。


「GYAuuRaaaa!!!!」


 やっと見つけた獲物に怪物は嬉しそうに牙をむき出しにする。

 おそらく晴れたきていた視界とラースの怒声を感じ取り、居場所を気取られてしまったのだろう。

 少女は怯え、絶望的な表情で黒蛇を見つめており、何やら股からは水のようなものが垂れてきている。

 だが、ラースにとってはもう見つかってしまったことなんてどうでも良かった。


「、、、。質問の続きだ、早く答えろ」


 淡々と彼女に答えを迫る。

 だが、少女は正気を疑ったような声音でこちらを見て呟いた。


「な、、、何言ってるの!!!はやく、、、はやく逃げなきゃ死んじゃうよ?!」


「命を惜しむ振りをするなと、さっきから言ってんだろ!!!!!!!」


 彼には関係なかった。

 せっかく助かった命も、自分が助けた彼女らの命も、もうすでにいない妹の命さえ、自分以外の全ての人間にとっては死ねば意味の無い無価値なものなんだと気づいてしまったから。

 だから、黒蛇に恐怖する彼女の態度は、安っぽいふざけた大根役者の演技にしか見えない。

 もう抗えない。

 妹との、リィナとの想い出を侮辱しているようにしか考えられない目の前の人間の存在が、同じカタチをしているという状態が、こんなものを妹と重ねてしまったという事実が、どうしても許せなかった。

 命を捨ててしまうことだと知ってても、もうこれっきり過去を振り返ることができないと身体が死を拒んだとしても、彼にとって、ラースにとって、妹の存在は自分の命と天秤にかけても釣り合わない価値がある。

 それが例え、彼らと本質的には変わらない矛盾した選択だったとしても。


「早く答えろ!!弟が死んだ、見捨てたお前は何を考えて息をしてる、死に怯える!!」


 この状況をまるで気にも留めないラースの様子に恐怖を覚え、少女は危機感を感じた。

 もし答えなければ、黒蛇より先に自分を殺しに来るのではないか、そう当たらずとも遠からずな心境を胸に、命乞いをするような気持ちで言葉を呟いた。


「、、、、なにも、、当然のことでしょ、、。みんなの命はみんな同じで、だいじなもので、、。弟も、この男の子も、私だって関係ない。同じ命なら、たくさん生き残る方を選ぶでしょ、、、。弟は!!!!!弟を選んでたら、、、みんな死んじゃってたでしょ!!!!なのになんでこんなことできるの?!そんなことしてる場合じゃないでしょ!!なんでわからないの!!!!!!」


「わかんねぇよ!!!!!!!!!!!!!」


 恐怖と不安、目の前の男の理解不能な狂気に当てられ、だんだんと声を荒げて言い張った彼女の答えをラースは一蹴した。


「なんでだ!!!なんでお前らは!!!!この国の人間は!!!!!人の命に重さがつけられないんだ!!!!一緒に過ごした家族と赤の他人の命を同じモノとして扱えるんだ!!!!大切だろ、大好きだったはずだろ。なら、それならちゃんと選べよ!!!!」


「GYAAAAAAAAAAAAAAAAURAAAAAAAA!!!!!!!」



「黙ってろ!!!クソ蛇!!!!!!!」


 黒蛇の絶叫を、黙るように睨み付ける。

 ソレに相手してる暇がないほどラースは憎しみの、憤怒の炎に身を焦がしていた。

 あまりにも人間とは思えないほどの怒りの波動は黒蛇にも伝わり、やはり知性が存在するのかそれっきり押し黙った。

 それを確認すると、ジリジリとへたりこむ少女のもとへと距離を詰める。


「、、、、。嫌いだよ、、、本当に、、。せっかく、、ちゃんと思い出せたんだ。死にたくない理由、、、。でも、やっぱり無理だったよ。お前らを見てると僕の大事なモノに無価値だって言われているみたいで、、、。憎くて憎くて、この身体が焼かれてるみたいだ、、、。」


「こ、こっち来ないで!!!」


 少女は拒絶するように、尻餅をついたまま後ずさる。

 それでもなお、彼は近づくことをやめない。

 憎しみの炎を原動力に、この身を前へ前へと押し出す。


「なら、僕が聞くことぜんぶ答えろ。じゃなきゃ黒蛇よりも先にお前を、、、。」


 少女はその言葉を聞いてぞっとした。

 この国に人殺しを犯した人間なんて聞いたことがない。

 冗談でも、確実に楽園送りにされるだろうその言葉は疑う余地がないほど、冷徹で苛烈で現実感を帯びたモノだった。


 一歩踏み出す。


「一つ目、弟を見捨てたときなんて言った。」


「、、、、ご、、ごめんなさい。仕方の無いことだから許してください、、、。」


一歩踏み出す。


「二つ目、弟はなんて言った。」


「た、、、ただ黙って泣いてました、、。」


一歩踏み出す。


 「三つ目、そのときお前はどう思った。」


 「も、、もうどうしようもならない、、、。助けれなかったけど、、、、私たちだけでも生きなきゃって、、。」


 一歩踏み出す。


「四つ目、今お前はどう思っている。」


「し、、しにたくないです、、、、、た、たすけて、、、。」


 踏みとどまる。


 ――ああ、なるほど。


 もう、すぐ目の前のへたり込んで大粒の涙を垂らす少女を見て呆れる。

 だが、理解できた。

 幼い頃に抱いた両親への、この国への嫌悪感のカラクリを。

 今までは自身が歪なのだと、理解されないのはこの国の正しさから外れてしまったからなのだと、そう思ってた。

 それでも自分の気持ちを優先した。

 悔恨から、罪悪から目を背けるわけにはいかないと思った。

 だからこそ彼らに自身の行いは間違いだ、意味が無い、みんなと同じように生きろと言われているみたいで、腹が立った。

 その積み重ねは不満から怒りへ、怒りは憎しみへと成長させた。

 でも違ったんだ。

 彼らにとって人間は平等であり、命の重さは質ではなく数で決まる。

 失われた、もしくは助けられないものにはそれすら見いだせない。

 そのくせ、命の重さは等分であり、存在しない訳ではない。

 だからこそ命乞いもするし、死を拒もうとするのだろう。

 そんな歪な価値観を持った人間がこの国では掃いて捨てるほどいる。

 その事実に、ラースは、、


「心底気持ち悪いよ。おまえら、、。」


 自分と同じ人間が一人もいないことに、この気持ち悪い化け物共を生み出したこの世界に、心底吐き気を催した。

 ようやくわかったのだ。

 歪なのは自分ではない、世界の方なのだと。

 そう気づけたから、笑いが止まらないのだろう。


「ふふっ、あはは、ふははははは、あははははは!!」

 

 腹を抱えて笑うその姿はどこか歪だった。

 少女から見て、この狂人は嗤っている。

 嗤っていながら世界で一番泣いている、悲しさで壊れてしまったのだと、涙もないのにそれがわかることが、ひどく不気味だった。


 笑うことにも疲れ果て、周囲は静寂に包まれた。

 もういい。

 もう疲れた。

 結局、一人なことに変わりはないのだから。

 だから、さよならの言葉を告げよう。


「、、、、お前らの笑ってる顔が嫌いだ。みんな、不幸なんてない、今が一番幸せだみたいな顔をしているからだ。、、、お前らの性格が嫌いだ。誰にでも同じように優しく接するくせに、死んだ人には無関心だから。、、お前らの価値観が嫌いだ。死ぬことを恐れるくせに、他人も自分も命の値札が変わらないから冷静に捨てるべき命を判断できるから。、、、お前らが、、お前らがおまえらがオマエらが!!!オマエらが吐く言葉が、まなざしが、考え方が!!!!僕を何度も何度も何度も傷つけて痛くてたまらないんだ!!!!!ずっとずっとこの世界で生きることが苦痛だった!!!!僕の大事なモノはもうどこにもないのに!!!笑って生きてるオマエらを見てると心底壊したくなった!!!!僕は!!!僕は!!!僕は!!!!僕は嫌いだ!!大嫌いだ!!!!!僕以外の全てのモノが!!!人を差別できないおまえらが!!!!善性を持つことに浸り、平等で腐ったこの国が!!!!!僕の大事なモノを何もかも、寄ってたかって否定するこの世界が!!!!消えて欲しくてたまらない!!!!」


 世界を呪う、惜別の言葉。

 彼にもう、思い残すことはない。


 最後の一歩を踏み出す。


「五つ目、これが最後の質問だ。僕がナニに見える。」


GYAAAAAURAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAUUUUUUU!!!!!


 その言葉は、黒蛇の雄叫びと重なる。

 だが、少女にははっきりと見えた。

 黒蛇を背に、まるで背中から生やしているように見える彼の姿は、、、



「ま、、、、まもの、、、、、。」


 その姿はまるで、人のカタチをした怪物だった。

 

 



 そう認識した瞬間、彼女の命の鼓動は途絶えた。




――――



 ソレは不思議だった。

 最初はなにも期待していなかった。

 有象無象の人間モドキのうちの一人。

 しかし、コイツはどうやら何か違う。

 なぜこうも心地良いのだろうか。

 この人間は楽しい。

 おもしろい、もっと見たい、そう思った。

 戦闘技術にいたってもそうだ。

 今までのヤツらとは違う。

 全く別な戦い方で、見たこともない魔法を操る。

 さらにはそれを工夫して使ってくる。

 楽しいと、一撃でそう思った。

 いいぞ、もっとだ。

 もっと見せろ、もっと抗え。

 次はどうくる、なにをしてみせる。

 魔法の使い方は大変申し分ない。

 頭を捻っては確実に傷を負わせてくる。

 まだ死ぬな。

 まだ戦りたい。

 もっと、もっと、もっと、ワタシを楽しませろ、人間もどき!

 






 だが、最初は良かったのに、その後がダメだった。

 期待外れだった。

 ここからが本番だった。

 『異能』を使わせてくる相手など滅多にいないのだ。

 だからこそ、次は何を見せる、知恵をしぼる、どう戦うのかと胸が高鳴った。

 だからこそ、許せなかった。

 この男は魔力が切れ、『異能』の一端を見せたらあっさりと無様に脚を折った。

 失望した。

 無駄だった。

 こんなひどい仕打ちはあんまりだ。

 もっと、もっとだ!

 血湧き肉躍る戦いを、お互いが果てるまで続けていたかったというのに、、。

 こんなに、胸が高鳴ったのはひさびさだった。

 同時にこんなに失望したのは初めてだった。

 もういい。

 はやく殺してしまおう。

 そう思って近づいた。

 それなのに、

 それなのに、背を向けて逃亡する男に腹が立った。

 潔く死を認めればまだ良かった。

 不快だ。

 ただただ不快だった。

 今まで戦ったどの相手よりも、こんなに怒りが湧き出てくることはなかった。

 不思議に思ったが、はやくこいつの息を止めたかった。

 期待させて落とされるなど、最悪の気分だ。









 狭い道に入った男はなおも、しぶとかった。

 死にかけの身体に鞭を打つ姿は、いっそ哀れですらあった。

 もう半ば自棄にここら一帯を灰燼に帰せば死ぬだろうか。

 そう期待して眼前に広がる全てを更地にした。






 失敗した。




 迂闊だった、まさかこんなに視界を覆うほど埃が舞い散るなんて思わなかった。

 今の衝撃でヤツの命は絶てただろうか。

 いや、ワタシの勘が言っている。

 あの無様な生き物はまだしぶとく生にしがみ付いている、と。

 億劫だが仕方ない。

 一度殺すと決めたならば曲げることは許されない。

 ヤツを確実に殺す。








 それの身体は蛇のカタチを取っている。

 だが、蛇と同じように熱を感知する器官は存在しないため、捜索には難儀した。






 焦れったい状況に怒りが積み重なっていく。

 こんなことをしなくても構わない手段はあるのだが、できるならヤツの死に様を目に焼き付けなければ、この気持ちの高ぶりは抑えられない。

 視界を遮られた状態のソレは歯がゆい思いを抱きながらも何故だか確実に目の前で殺すことに執着している己に違和感を覚えた。



 しばらくの時が経ち、

 

「なんでもクソもないだろ!!そうやって、貶されただけで涙を流すお前が、いや、この国の人間全員が!!失われた命に、記憶に、存在に!!価値を見いだせない、涙を流せないなら!!化け物じゃなくて、一体何だって言うんだよ!!!答えろ!!!」


 なにやら怒気を孕んだ声を関知した。

 間抜けなヤツだ、この状況でそれは自殺行為だ。

 身体に魔力を滾らせ、一気に解放する。

 そのまま声の方向へ一直線に障害物を壊しながら駆け抜ける。

 見つけた。

 

「GYAAAAAAAAAAAAAOOOOOOOOYRAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」


 ようやくこの胸の熱を、目の前の生き物を殺すことができる。

 そう思った。

 それなのに、コイツは何をしている。

 ワタシのことが視界に入っていないのか?

 いや、そんなことはない。

 認識した上で無視をしている。

 ワタシを無視して、対面の小娘に気を取られている。

 このワタシを・・・・・・

 腹が立った。

 ちゃんと恐怖するべきだ、オマエらのような贋作でもそれくらいできるだろう。

 ワタシを見ろと言わんばかり雄叫びを上げる。


「GYAAAAAAAAAAAAAAAAURAAAAAAAA!!!!!!!」



「黙ってろ!!!クソ蛇!!!!!!!」


 ・・・・・・・ん?

 は?

 今なんと言われた?

 理解できなかった。

 いや、この男がワタシが眼中に入ってないのは見ればわかる。

 それでも、先ほどとは違い全く怯えていない。

 なぜワタシにこんなにも不快な対応ができる。

 なぜだ、あんなに命を惜しんでいたはずだろう。

 なのになぜそんな真似ができるのか。

 頭でも打ったのか、自暴自棄になったのか、はたまた狂気に支配されたのか、いや違う。

 気づいてしまった。

 コイツの目には、死の恐怖よりも強い憎しみの炎が宿っていた。

 そして、その憎しみの原因はなにか。

 何を否定され、こうも怒りを露わにするのか。

 それを傷つけたのはワタシではない。

 それはコイツの目の前の小娘によってもたらされたのだと、だからこの凶悪な魔物を前にして一歩も引かないのだ。

 気になる。

 なんだ、それは一体。

 知りたい。

 コレに抱いていた興味が、期待が再びこの身に灯るのを感じる。

 教えろ。

 それだけが頭の中を支配する。

 オマエはいったい何だ。




「お前らの笑ってる顔が嫌いだ。みんな、不幸なんてない、今が一番幸せだみたいな顔をしているからだ。お前らの性格が嫌いだ。誰にでも同じように優しく接するくせに、死んだ人には無関心だから。お前らの価値観が嫌いだ。死ぬことを恐れるくせに、他人も自分も命の値札が変わらないから冷静に捨てるべき命を判断できるから。、、、お前らが、、お前らがおまえらがオマエらが!!!オマエらが吐く言葉が、まなざしが、考え方が!!!!僕を何度も何度も何度も傷つけて痛くてたまらないんだ!!!!!ずっとずっとこの世界で生きることが苦痛だった!!!!僕の大事なモノはもうどこにもないのに!!!笑って生きてるオマエらを見てると心底壊したくなった!!!!俺は嫌いだ!!大嫌いだ!!!!!人を差別できないおまえらが!!!!善性を持つことに浸り、平等で腐ったこの国が!!!!!僕の大事なモノを何もかも、寄ってたかって否定するこの世界が!!!!消えて欲しくてたまらない!!!!」




 ・・・・・・・・・・・そうか、そういうことか。


 



 ソレは過去に、今の光景と重なる遠き日の記憶に思いを馳せる。




 自身が今の姿になる前。

 まだ感情も心も何もない、ただ求められた役割を全うするだけの存在だった。

 このままこの身は変わることは無いだろうと思っていた。

 だが、転機があった。

 そのときに感情も、心も、魂までも与えられた。

 戸惑った、混乱した、不安だった、喜びの感情を抱くことはなく、ただ役割を果たすだけの存在であることの方が楽だった。

 その証拠に、既にこんな、以前は何も思わなかったはずなのに、もう気持ちが溢れてくる。

 これはなんだ、怖い。

 ワタシがワタシじゃなくなったみたいだ。

 こんなものへと変貌する要因を作ったのは、自身の主とも言えるべき存在だった。

 だが、いくらこの気持ちが怖くても、主を恨むような真似はできなかった。

 それは、ワタシの生まれてきたこと全てを否定することになってしまう。

 主は、できた人間ではなく、むしろ悪人とも言われるような人物だった。

 騙す、犯す、奪う、殺すことも時にはあった。

 そんな人間でも主なのだ、ここ以外に居場所などない。

 だがなぜだったろうか。

 不思議と彼といると心が安らぐのだ。

 この気持ちは何だ。

 ワタシにはわからなかった。

 それでもいい、彼といないと潰されそうになるのだ。

 自身の全てに。

 だから、黙って後ろをついて行った。

 



 ある日、事件が起きた。

 ワタシがこの身に授けられた全てに苦悩し、抑えられなくなったのだ。

 そして、全てを、なにもかもをの感情を彼に、主にぶつけたのが発端だった。



 たくさん言葉を吐いた。

 感情を得て以来、なにをするにしても抑えてきた己の醜い部分を全部。

 主は驚いたように立ちすくみ、呆然として身体の力が抜けたみたいになった。

 嫌われるだろうか、怒るだろうか、失望するだろうか、もうワタシを傍に置いてはくれないだろうか。

 言わなければ良かった。

 自身がまいた種でこんな思いをするなら、この身がこんなことで痛みを感じる脆弱なモノへと変貌したなら、やはり間違いだったのだ。

 この身に過ぎたモノだった。

 後を去ろうとした。

 もう傷つきたくない、どこかへ来てしまおう。

 もういい。

 そう思った。

 だが、


((オマエと一緒に生きたかったんだ。俺が死んでも、オマエが死んでも、覚えていたかったし、覚えていてほしかった。一人にさせたくなかった。それは、オマエが誰よりも特別で、大切だったから。だからな、いいんだ。それでいい、嬉しいんだ。おまえがそんなことを思ってくれることが俺にとっては宝物なんだ、、、、、、だから、だからな。ずっと傍にいろ。これから先ずっと、俺が欠けても、オマエが欠けても、記憶の中では一緒だ。))


 主はワタシの全てを肯定した。

 無様にも涙を溢して泣いたのを覚えている。

 だが、とても暖かい言葉だった。

 その時だ、この身に余る代物とやっと折り合いを付けることができたのは。

 同時に、ワタシにとっても目の前の彼は特別で、かけがえの無い存在なのだとようやく気づけた。







 そんな主と、目の前の男が重なるのだ。

 もうどこにもいない、大切な存在に。

 ちゃんと言われたようになった、ワタシの記憶の中で生き続ける彼に。

 いや、主だけではないな、ワタシにもか。

 ワタシでも、主でも、一致するのだ。

 この男が怨嗟のように吐き出したこの世界への言葉は。

 


 だから、こんな真似をするのだろう。

 


『GYAAAAAURAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAUUUUUUU!!!!!』





――――





 視界の少女は全身を赤い結晶へと転身させ、崩れ落ちる。

 平衡感覚を失い、重力に引かれ地面へとたたきつけられたそれは、無残なほどに砕け散り、少女の命がもうないことを示している。


「、、、、、。」


 辺りを見回す。

 するとそこには、全てが赤に塗り変わってしまった世界があった。

 亀裂の入っていた地面、歪に折れ曲がった噴水のモニュメントも、倒壊した建物、大気上に散った砂の粒でさえ、赤黒い結晶へと変貌し地面へと落ちる。

 遠くを見ても、赤くないところなど見つからない。

 空はもう明け方だ。

 黒い夜空から青い空へと変わる間の絶妙な色。

 そして、大地を埋め尽くす赤の結晶。

 世界はこの二色で分断されてしまったのだと思えるほど現実離れした光景だった。


ーー、、、。


 しばしラースは思案する。

 目の前で起きた少女の結晶化、そしてあたり一面の景色。

 おそらくヴィーグナ全域は、この魔物の『異能』で町としての命を落とした。

 問い詰めるようにソレと向き合い、睨み付ける。


「なぁ、、、横取りか?まだ話の途中だったよな。」


 別に命を取るつもりなど無かった。

 なぜなら、そんなことをせずともどうせこの後、自分も少女も死ぬのは目に見えたことだったのだ。

 だが、それでも黒蛇が犯した行いを許すことなどできなかった。

 別に彼女に対してもう言うことは無かった。

 それでもあんな言葉だけでは自身の全てを、恨みを、怒りを、憎悪を、この世界に吐き出したなんて嘘でも言えなかった。


「まぁいい、、。なんで僕だけ『異能』で殺さなかった。意味がわからない。」


 無理解を顔で表現し、黒蛇の反応を伺う。


――言っても、結局わかんねーか。


 なにをしているんだと、魔物が考えることなど知るよしも無いのに無駄なことをしたと自嘲する。

 そんなことを考えている状況では無い、今は黒蛇が目の前なのだ。

 魔力は当分は戻らない。

 結局、死ぬしか無いのかと軽くため息をして、後生だと言わんばかりにその言葉を伝える。


「命はくれてやるよ。だが、これはダメだ。」


 そう言って、妹の形見がある懐を黒蛇に示すように視線で伝える。

 もう己の寿命が目の前の怪物に委ねられているは重々承知している。

 だがそれでも、コレだけは許容できない。

 自分が死んでも、妹が生きた証だけは消させたくない。

 この世の誰一人、覚えてないとしても、そこには確かに命があったのだから。


「わかったら、返事しろy、、、、、」


――、、え?


 黒蛇が了承するとも思えない願いを、それでも譲れない気持ちをぶつけるように声をかけたそこには想像もしていなかったモノが目に写った。


――、、、、、なんだ、、それ。


「、、、、、、、、。なんだよその面、、。」


 黒蛇の眼から何か、滴のようなモノが流れていた。

 頭の中が真っ白となった。

 魔物にソレは似合わない、聞いたことが無い、そんなことなどあり得ない、おとぎ話だソレは、、、。

 だが、目の前の怪物はこちらを見て、涙を流している。


――なんだよ、、、、。


 脳が機能を停止した。

 あり得ないという言葉で身体のすべてを埋め尽くす。

 脳から出てくるその言葉は、それと心臓の機能を交換でもしたのかと思えるほど、一拍おきに血液に乗って循環しているみたいだった。


「、、、、、、、、、、ふふ、ふはははは。」


 笑い声が漏れる。

 おかしくなった。

 絶対そうだ。

 なにもかも理解できない。

 目の前の光景の異質さに、魔物が涙を流す?なんだそれは、だれも信じない、精神異常者か何かの妄言の類いだ。

 迷わず自分を疑った。

 見間違いか、気が触れておかしくなったのか、とうとう壊れてしまったのだと。

 もう一度、黒蛇を注視する。

 目当ての、自分が知っている光景になるまで何度も何度も瞬きをした。


「、、、嘘、、だろ、、、。」


 だが、それは自身の問題では無かった。

 何回やっても変わらない。

 何度も何度も目を閉じては見返した。

 でもいっこうに涙を流す黒蛇という映像しか写さない。

 何度も何度も何度も、一向に映像が切り替わらない。

 おかしくなりそうだ、こんなもの受け入れちゃだめだ、そんなもの、、人として、、、。

 人?本当にそうか?今更この後に及んでまだ人間だと思い込んでいるのか。

 それは無理だと悟ったじゃないか。

 先ほどあの少女に言われたじゃないか。

 もう、自分は人間なのではない、魔物と変わらない存在なのだ。

 なら、人間でなくなったなら、、、もういいじゃないか。

 そうして、ようやく受け入れた。

 現実のものだ。

 理解するのに、受け入れるのに、こんなに時間を費やすくらい、それは真実で、あまりに異常だった。

 だから、受け入れられたなら、嘘ではないのだとわかってしまったから。

 安心した。

 コイツは約束を違えない。

 そう、エイヴァロンの人間ではあり得ない、魔物へ対する信頼を抱き、スッと胸のもやが取れた気がした。

 

「、、、いまだに自分の頭を疑っているよ、、、。」


 受け入れられたとしても、やはり今の現状が特別なことには変わりない。

 それでも、もう大丈夫だと思えたから。

 妹をこのままいさせてくれると理解できたから。

 だから、、


「ありがとう。」


 そう言って、目を閉じた。

 黒蛇もこちらの気持ちが理解できているように、涙を流しながら近づいてくる。

 もう、思いの残すことは無い。

 なぜだろうか。

 あんなに世界が憎かった。

 それなのに気持ちは晴れやかだ。

 

「GYAuraaaaa」


 黒蛇の声を耳で感じた後、身体が結晶化していくのを感じる。

 痛みは無い。

 もう、心が傷つくことなど無い。

 そう思えばこそ、身体を委ね安心したように眠りに付くことができる。

 こんなことができるのは、こんなに身を預けられるのは、きっと、この魔物だけが理解してくれたからだ。

 彼の悔恨を、罪悪を、憎悪の全てを。

 最後にラースを受け入れたのは、人間でも、この国でも、こんな世界でも無く、忌み嫌われる原罪の魔物だった。

 皮肉なことだ。

 だけど、心地よい。

 赤い結晶が足から全てにかけて、残るは顔だけとなった。

 黒蛇の顔をもう一度見る。

 そこには、どこか寂しさを覚えた表情でこちらを見据える一匹の獣がいた。


――、、、、。ははっ、おもしろい面だ。


「・・・ふふ、じゃあな、理想郷。」


 この世界へと送る最後の言葉ともに、ラースの心臓はそこで動かなくなった。












――――








時刻はラースの命が途絶えてから、一刻ほど遡る。



 「きさまぁ!!!何者だ!!!!!」


 既にヴィーグナの町を発っていた船上での出来事だった。

 伯爵お抱えの衛兵が不審な人物に誰何する。

 この国、ましてはこの状況下での不審な行いは重い罪が重ねられる。

 それを加味した上での、衛兵の言動である。

 その彼の前に、先ほどから長い得物をを持ち、辺りを彷徨く目深にコートに付いたフードを被る人物が応答する。


「なにもの、、、、、あ、、、わたし、あれです。なんて言ったけ?、、、、、、忘れました。ごめんなさい、、、。代わりに顔見せますね、、、。」


 感情が伴わない声音で胡乱な態度のその人物は、めんどくさそうにフードを取った。

 そこには、長い黒髪で切れ長の目に青い瞳を持つ、美しい女の姿があった。


「な、、、なんだ、、なんだその姿は、、、。」


「、、、え?変ですか?、、、よく可愛いって言われて謙遜する方なんですけど、、、ショックです、、、。」


 「な、なにを言っている?、、、、、なんで、角なんか生えて、、、、。」


 その女の頭には片側はどこか欠けてしまった、黒く鋭利な角が生えていた。

 自身の容姿への反応が不服だった彼女は、改めるように衛兵へと声をかけた。


「角?ああ、これですね?、、、、かっこよくないです?、、、、、あれ?なんか思ってたのと違う反応、、、。」


 態度を改めるようにしても、どうにも変わらない、むしろ先ほどよりも険しい態度に変わってしまった衛兵が女に対して告げる。


「お、、、おまえ、、、ふざけているのか、、、魔物の姿を模す愚行は極刑に値する!」


 衛兵は目の前の、今まだ見たことも無い不埒な犯罪人に対して罪を言い渡す。

 だが、等の本人は大して気に様子も無く会話を続行する。


「え、、、そうなんです?かっこよくないですか?、、、、、可愛くも、、、?」


「ふざけるな!!オマエのような者は身柄を拘束させてもらう!!」


 あまりにもふざけた態度を取る目の前の女に、痺れを切らした衛兵は捕縛をするように他の衛兵を呼ぶ。

 だが、



「さぁ、そこを動くな。不審な行いをすれば痛い目を見るぞ?」


「いたい?、、、、うーん、、。それってどんなでしたっけ?そんなの、、あなたたちが弱すぎて忘れちゃいました、、、、、。」


 その言葉と共に腰に差していた得物を抜く。

 長く、そして少し反っているそれは、エイヴァロンには存在しない刀と言われる武器だ。


「な、、なんだそれは、、、、、、。」


 衛兵が思わず呟く。

 彼はもちろん、この国の大半は刀と言われる者を知らない。

 なぜなら、この国はほぼ鎖国状態で他国との交流が極端に少ない。

 だからこそ、彼女の得物など見たことも聞いたことも無かった。

 だが、異常なのはそこでは無い。

 その得物の刀身には、、、

 原色のペンキで塗りつぶしたような、黒く、禍々しい炎を纏っていた。


「これ?、、、、、、知って何になるんです、、、?もう、死んでるのに。」


 その言葉を最後に、その衛兵の意識は途絶えた。

 なぜなら、すでに、頭と身体があらぬ位置に分断されていた。


ゴンッ、、バタッ、、、。


 衛兵の死体が一つ出来上がり、まもなく彼の死体は大気中の魔力へと変換するように消えていく。

 その光景に場を見守っていた、やっとの思いで黒蛇の脅威から避難してきた人々は、


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!」


 幕を切ったかのように、一斉に逃げ出した。

 阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

 船上は戦場と化して、戦う能力のないものはその場から離れるように走り出した。

 老若男女問わず、そこには恐怖が蔓延している。

 あまりにも、一瞬だった出来事に彼女の、目の前の人間にしか見えない怪物に死を想起させらられる。


「だれか、、、だれか、、彼らを、、『メノン』を!!!!」


 対魔物傭兵部隊『メノン』。

 その内の傭兵が何人か、明日の入隊試験のため召集されていた。

 彼らは、かの有名な『ホムンクルス』に次ぐ、実力者揃いの傭兵集団だった。

 だが、


―一閃。


 女が振るう。


「、、、、いえ、、、おしまいです、、。死んでるって言ったでしょう?」


 その言葉と同時に、黒い炎が船を包んだ。

 

「ぎゃぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!いだい!!!いだい!!!!!!」


 悲鳴の合唱。

 それは黒い炎と同じように船のどこにいても聞こえるくらいの音の振動だった。

 だからこそ、まだ黒い炎が侵略していない個室から、一人の男が甲板へと足を向かわせていた。


「何事だ!!!」


 船上の異変に気づいた『メノン』の一人が船内から駆け上がってきた。

 耳を突き刺すほどの人々の絶叫を肌で感じて、彼は脳内で警報が鳴る。

 この凄惨な現場の犯人は誰だと言わんばかりに船上を見渡す。

 

「やつか、、、、ぇ?」


 首謀者をすぐに見つかった。

 その人物は黒い炎を纏い、立っていた。

 そして、すぐに理解した。

 恐怖した、戦慄した、後悔した。

 なぜならそれは、


「ま、まじん、、、なのか、、、」


「あ、、、、、、それです。思い出しました、、、、感謝です」


 恐る恐るといった、絶望の灯った声音で尋ねる。

 そしてその人物、いや、怪物はこちらを見てつっかえが取れたという風にお辞儀をした。

 その光景は普通の人間の様に見える。

 だが、彼は知っていた。

 聞いたことがあったのだ。

 その存在は、原罪指定という、魔物に対する区別をする要因となったもの。

 それは、人の姿をしながら『異能』を使う禁忌の存在。

 原罪指定とは、最初は彼らを指し示す言葉だった。

 その名も、原罪指定 『魔人』。

 黒い炎の中で嗤う目の前の怪物を見て、その存在と重なる。

 いいや、本物だ。

 なぜなら、いまさっきこの女は自分で、、、。

 そして彼は、、


「た、、、たすけて、、、、、。」


 眼前に佇む『魔人』に命乞いをした。

 そして、


「あ、、、、だめですね、、、。ばいばい。」


 無慈悲に告げる。

 なにも悪びれる様子が無いように、まるで害虫駆除のように冷たい目で。


「いやだ、いやだいやだいやだいだいだいだいいだいだいだい!!!!!!!」


 現実逃避の言葉は痛みへの怨嗟へとカタチを変えて黒い炎に彼は飲まれた。






 避難客の人間は不思議だった。

 あまりの激痛に身体は言うことを聞かず、痛みへの嘆きを虚空へと投げかけることしかできない。

 四肢は全く動かず、この炎を払おうと躍起になることもできない。

 それが不思議なのだ。

 この炎は、全く熱を持たない。

 それがもたらすのはこの身を焼き尽くすほどの赤い炎などでは無く、激痛で我を忘れ、自害したくなるほどの痛みだった。

 そう、彼らはそれだけが共通して、痛みにより、痛みを思いながら生命の幕を閉じた。

 




 黒炎の中、彼女は嗤う。


「うーん、、、、。空気がおいしい」


 沈んでいく黒を纏った船の中で、ただそれは嗤っていたのだ。



――――




 時刻は戻る。

 



コツ、、、コツ、、、、


 足音が赤く結晶化した世界に響く。

 そこは、今は見る影も無いヴィーグナの町の一角だ。


「、、、、いないなぁ、、、、。黒蛇さん、、、。どこいったの?」


 それは、片側が欠けた、黒い角を生やした黒髪の女だった。

 彼女は、目に手を添えて遠くを見るような仕草で周囲を右往左往している。

 その珍妙な行動をしてしばらく、彼女は腕をだらんと下げる。

 

「ん、、、、、アーちゃんに怒られる、、、。」


 なにか少し、怯えた様子で呟くその女は目的の存在がいないことに肩を落とした。

 ヴィーグナの町には、取り残された人の姿も、そして赤の景色を作り出した元凶の黒蛇の姿も、どこを切り取っても見えなかった。

 彼女はとある人物からの叱責をどうやって言い逃れするかだけを考え、あっちへ来たり、こっちへ来たりと忙しない。

 そして、とある障害に頭をぶつける。


「あだ、、、。ん?」


 それは、大きくそこらへんに散らばっているものとはわけが違う、高密度な魔力で結合された綺麗な緋色の結晶だった。

 

「、、、、、、、、なにこれ、、、。」



 ソレは不気味なほどに、禍々しさと神々しさを併せ持つ異質なものだった。

 そしてなにより、女が不思議そうに見つめるのは、明らかに死んでいるはずなのに魔力へと変換されていない、眠るように結晶の中で形を保った男だった。

 そして、口に手を当ててその男を観察する。

 すると、


「もしや、、、、、もうどうにもなればいいのだ、、。」


 何か思うところがあったのか、言い訳の口実を見つけたような彼女は、なんとか首の皮一枚繋がったという様子でソレに触れた。


「、、おきてる?、、ないか、、。キミ次第だ、、、たのんだ、、。」


 すると、ソレは黒い炎に包まれる。

 だが、どこか貴重品を扱うような穏やかな具合でみるみるうちに結晶化が解けていく。

 男を覆っていた全ての結晶は魔力の塵となって空気中へ舞い、男が下界へ放り出される。

 女はすかさず、転ばないように受け止め、願うように意識がない男へと呟く。

 

「、、、勘がいってる、、キミが、、えっとなんだっけ?、、、まぁいいや、そういうこと。でも違ったら泣いちゃう。」

 




 この時だ、この時からこの男の、ラース・ウィンベルの人間としての生は終わりを告げ、新たな別の何かの生が始まったのは。


 

 

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