第2話

都営住宅は独特な雰囲気があった。

適当に選んだから、割とへき地のほうに住むことになった。

それでも誰も助けてはくれないのだと感じる隔絶感はいかんともしがたかった。

生活保護費は安かったが、食べるには十分で医療費は無料だし、都営住宅は新築同然だし、割と快適だった。

中も広々としていたし、訳アリの住人は多そうだったが、夜は静かだし、昼間は家にいる人が多いせいか、訪問看護の人たちがよく来るイメージだった。

孤独だった。私は生活保護費を使って、飲み屋に行ったりもしたが、すぐに使い切ってしまうので、そのうち飲み屋に行くのもやめた。自分自身がとても哀れな存在に思えてしょうがなかったからだ。世の中には働けない人間がいる。

世の中には運の悪い人間がいる。世の中には時として誰とも巡り合えない人がいる。

それを強く実感するのだ。冬は寒い。メルカリで買ったコートを着込みながら、越冬する。今年の冬は寒いが、団地の冬はさむい。ギターを買ったはいいけど、指が痛くてギターが弾けない。運が悪いな、元気な時にもっといろいろやっておくべきだったなと思った。

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