君がたとえ痛くても
高見もや
第1話
「痛みが取れないの」
どれほどの呪いがかけられたとしても彼女にかけられた身体的苦痛は半永久的に消えることはない。現代の医学では取り除くことはできず、原因も明らかになっていない。関節リウマチ。彼女はゆっくりとうなだれながら職場探しをあきらめ、旦那さんもなく、彼氏もなく、この後どうしたらいいんだろうとぼんやりと考えていた。
障害者と呼ぶにはあまりにも軽微で、しかし高額療養費がかかり、精神医療人違い自立支援医療が適用されるわけでもない。狭間の障碍者となってしまった彼女はこれから先の人生をどう生きるべきか考えあぐねていた。強く生きよと人は言う。しかしこんなド田舎で。どうしろというのだ。バイタリティもなく、就職先もなく、力仕事しかないような田舎で関節リウマチにかかってしまった。絶望じゃないか。そう考えるとうつ病にかかりそうだ。
そんなことをかんがえていると、たちまち独り暮らしの家賃は底をつきあっという間に生活保護になってしまった。
生活保護になってみるとこれはこれで楽なものだった。医療費は安く働かなくていいし、昼間から酒を飲んでいいし、あえて言うなら車が持てないこと以外に不都合はなかった。でも別にそれって最近の若者のスタンダードらしいし、自転車だけで生活している人もごまんといるし、東京のほうに行けばむしろくるまなくてよくね・と思い、思い切って、都営住宅に引っ越した。リウマチ科のある総合病院と冷蔵庫さえあればいいのだ。そんなに難しいことではなかった。最初は怖かったけど、すぐになれた。
そして私のリウマチ生活保護ライフが始まった。
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