第110話

そんな運転手の努力で、車はすぐに屋敷へ到着した。


すぐに車から降りた俺はせなの部屋へと向かった。そこには、確かに生活していた証は残っているのにせなだけがいない。ぽっかりと抜かれたようだった。


せなの部屋にいるのが耐えられなくなった俺は、座敷へ向かい倒れていた組員の状態や今の状況などの報告を聞いた。


どうやらせなはまだ見つかっていないらしい。しかもいつ居なくなったのかもわからないと。それに加えて、せなは薄着に裸足で逃げ出した。外に出ることのないせなが靴を持っていないのは当たり前のことだし、常に部屋にいるせなには冬に外で着るような厚着は与えていない。



「一刻も早く探し出せ!!女一人見つけ出せないほど俺はお前らを腑抜けに育てたか!?」


気が付けばそう怒鳴っていた。だが早く見つけないとせなが風邪を引いてしまう。こんなに寒いのに、一人で大丈夫なはずが無い……くそ…っ!!


俺は自分の非力さを噛み締めた。

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