第108話

『っ…若!?申し訳ございません!!今すぐ屋敷にお戻り下さい!!』


そんな声が電話口から聞こえてくる。


「何事だ。落ち着いて簡潔に説明しろ」


そう言いつつすでに用意された車に乗り込み、屋敷へと向かう。



『っ……瀬南様が、お逃げになりました…!!』


「……あ?んだと…?」


自分でも驚くくらい低い声だった。

運転席では何事かと運転手が肝を冷やしているのにも関わらず、


『見回りの者が、瀬南様の見張りをしていた者が倒れているのを発見しまして…門番も倒れておりました…』


「今すぐ人員を手配しろっ!!組員を総動員してでも探し出せ!!!」


そう、怒鳴りつけた。

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