第89話

『あ、あ、の……』


「ん?どした〜??」


『人を、探してて…私のお父さん、なんですけど…』


私に視線を合わせるようにしゃがんだ綺麗な人に、やっとの思いでその言葉を吐き出した。


「やっぱり迷子?こっちおいで」


立ち上がり、手招きをする人に


『違うんです!あの、私のお父さん、分かんない…』


その人に伝えるうちに涙が込み上げてきた。

やはり、夜の街は怖い。それに不安だ。


「あー!待って!泣かないで!大丈夫だから、ね?」


その人はまたしゃがんで、私の頭を撫でてくれた。


「ん〜…訳アリっぽいし、とりあえず付いてきて?」


そう言って手を差し出したその人の手を、握ってみた。

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