第一章 - 二つの世界4

 リナは、朝の早い時間に目を覚ました。

昨晩のニュースが頭から離れず、胸がざわついていた。

レジスタンスの攻撃が仮想世界のデータセンターを狙ったという情報を知り、不安と緊張が交錯していた。

彼女は、これがどのように仮想世界に影響を及ぼすのかを考えながら、急いで研究所へ向かった。


 研究所に到着すると、仲間たちがすでに集まっており、昨晩の攻撃について議論していた。


「リナ、聞いたか?」

同僚の一人が声をかけた。


「仮想世界のデータセンターが狙われたって」


リナはうなずき「ええ、聞いたわ」と答えた。


「でも仮想世界には影響はなかったみたいだ」


 彼女はすぐにコンピュータの前に座り、システムの状態をチェックした。

高度に分散化されたシステムと多層的なバックアップのおかげで、仮想世界の住民たちは何事もなく日常を過ごしていることを確認した。


 それでもリナの心には安堵感と共に、一抹の不安が残っていた。


「これが続けば、いつかは影響が出るかもしれない」

と考え、彼女はより一層の注意を払う決意をした。


 リナは、仮想世界の中にいる妹リオのことを思い浮かべた。

リオは自分が仮想世界にいることを知らず、幸せな日々を送っている。

リナはそのことが唯一の救いだった。


 その日の午後、リナは上司のミーティングに呼ばれた。

会議室には、研究所の主要なメンバーが集まっていた。

上司が深刻な表情で


「昨晩の攻撃について話し合う必要がある」

と切り出した。

彼は今回の攻撃がどれほど深刻なものであったかを説明し、今後の対策について議論を始めた。


「私たちは、仮想世界のシステムをさらに強化する必要がある」

と上司が言うと、リナは頷いた。


「具体的なプランは?」

と質問すると、上司は新たなセキュリティプロトコルの導入と、バックアップの強化について話し始めた。

リナはその話を聞きながら、自分の役割について考えた。


 会議が終わり、リナは研究所の屋上に立ち、遠くの景色を見つめた。

現実世界は混乱の中にあり、リナ自身もその嵐の中で揺れ動いていた。

しかし、彼女は決意を新たにした。


 どんなに困難な状況でも、仮想世界の平和と安定を守るために全力を尽くすと心に誓った。

今のリナにとって、仮想世界に移行した家族が安全で幸せであることが、何よりの支えなのだから。

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