第二章 - 虚実の防壁1

 カイル・オースティンは34歳の元軍人で、現在はセキュリティ専門家として働いている。

彼の父は元アメリカ海兵隊隊員であり、母は日本人のシステムエンジニア兼セキュリティスペシャリストだった。

彼は両親の才能を受け継ぎ、技術と戦闘戦術の両方に精通している稀有な人材だった。


 カイルはいつも早朝に目を覚ます習慣があった。

軍での訓練が染みついているからだ。

今日も例外ではなく、日の出前に目を覚ました。


 彼の目の前には、いくつかのモニターが並び、セキュリティシステムの監視画面が映し出されていた。

最近のレジスタンスの活動により、仮想世界のデータセンターが狙われることが増えていたため、カイルは一層の警戒を強めていた。


「おはよう、カイル」と声をかけたのは、彼の部下であるエミリーだった。

エミリーは優秀なハッカーで、カイルの右腕として信頼されている。


「昨晩の攻撃についての報告が届いています」


カイルは画面に目を通しながら

「エミリー、状況はどうだ?」と尋ねた。


エミリーは深刻な表情で

「仮想世界には影響がなかったようですが、データセンターの一部が物理的に破壊されました。ですが、バックアップシステムが機能しているためデータの喪失はありません」

と答えた。


 カイルは安堵の息をつき

「よし、今後も注意を怠らずに監視を続ける必要がある。彼らが次にどこを狙うかは分からないからな」

と言った。

エミリーはうなずき、すぐに監視業務に戻った。


 その日の午後、カイルは新たなセキュリティ対策を練るために資料に目を通していた。

彼のデスクには、最新のセキュリティプロトコルやレジスタンスの動向に関する情報が山積みになっていた。

「彼らがどんな手を使ってくるのか予測するのは難しいが、絶対に先回りしなければならない」

と自分に言い聞かせながら、カイルは集中力を高めていた。


 カイルの心には、母親から教えられたセキュリティの重要性が強く刻まれていた。

仮想世界にいる無数の人々の生活を守るため、彼は自分の知識と経験を最大限に活かす覚悟を固めた。


 その夜、カイルは母親の写真を見つめながら、心の中で誓った。


「必ず守り抜く」


彼の決意は揺るぎなく、次の挑戦に向けての準備が整いつつあった。

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