第一章 - 二つの世界3
最近、リオは心の奥底で何かが欠けているような感覚を抱いていた。
大学の講義が終わった後、リオは研究室に向かう途中、ふとその違和感が強まることがあった。
特に、自分の過去について考える時、心に霧がかかったような感じがするのだ。
幼少期の記憶は鮮明で、両親や友人たちとの楽しい思い出もよく覚えているが、ある期間だけが不自然に空白であることに気づいた。
ある日、リオは友人のサラとカフェで話をしている最中に、その違和感を口に出してみた。
「最近、何か大事なことを忘れている気がするの。あるところだけもやがかかってるみたいに、何かが抜けている感じがするのよ」
とリオは言った。
サラは驚いた顔をしたが、すぐに笑顔で答えた。
「そんなことないわよ、リオ。私たちは毎日が充実しているし、過去のことなんて気にしない方がいいわ」
しかし、リオの心の中の疑念は消えなかった。
彼女は自宅に戻ると、昔の写真アルバムを開いてみることにした。
アルバムのページをめくるたびに、懐かしい顔や出来事が浮かんできたが、あるページとページの間に奇妙な違和感を感じた。
「ここに何かあったはず…」
リオは心の中でつぶやいた。
その夜、リオは夢を見た。
夢の中で彼女は広い草原を歩いていたが、遠くに誰かの姿が見えた。
近づいてみると、それは見知らぬ女性だった。
しかし、その女性の顔には、どこか見覚えがあった。
目が覚めたリオは、その夢が現実の何かを示しているのではないかと感じた。
翌日、リオは大学の図書館で記憶と夢について調べることにした。
膨大な情報の中から、彼女は「記憶の操作」について書かれた論文にたどり着いた。
その論文には、特定の記憶が意図的に消されることがあると記されていた。
「まさか…」
リオは自分の記憶が操作されているのではないかという疑念を抱いた。
それでもリオは、自分が仮想世界にいることには全く気付いていなかった。
彼女は現実の中で何かが失われていると信じていたが、その真実はもっと深いところに隠されていたのだ。
リオは日常生活の中で、少しずつその欠けた記憶の断片を取り戻そうと決意した。
彼女は友人や家族との会話の中から、そして過去の記録を調べることで、失われたピースを探し始める。
しかし、それが彼女をどんな真実へと導くのか、リオはまだ知らない。
リオの記憶からは、姉のリナの存在が完全に消されていたが、それでも彼女は何か大切なものを失っているという感覚に苛まれていた。
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