第一章 - 二つの世界2

 仮想世界の朝は、現実よりもはるかに美しい。

リオはベッドの中で伸びをしながら、窓から差し込む柔らかな朝日を浴びて目を覚ました。

カーテンを開けると、緑豊かな公園が目に飛び込み、心地よい風が彼女の髪を揺らす。

子供たちの元気な笑い声が聞こえ、今日もまた穏やかで幸せな一日が始まるのだと感じた。


 リオはロボット工学を学ぶ大学生で、毎日が新しい発見と学びに満ちている。

通学の途中、彼女はいつものカフェに立ち寄った。

温かいカフェラテとクロワッサンを頼み、友人と一緒に窓際の席に座る。

二人は大学での出来事や最近のニュースについて話し、笑い合った。

ベーシック・インカムが提供されるこの世界では、経済的な不安がなく、こうした小さな贅沢が当たり前のように楽しめるのだ。


 大学に着くと、リオは興味深い講義に参加する。

教授たちは熱心に教え、クラスメートとのディスカッションも刺激的だ。

授業が終わると、リオは研究室に向かった。

彼女は人々の生活を支える新しいロボットの設計と開発に取り組んでおり、その研究が未来に役立つことを夢見ていた。

研究仲間たちと協力し合い、困難な課題にも挑戦する毎日は充実していた。


 夕方、リオは友人たちと街に繰り出す。

今日はお気に入りのレストランでディナーを楽しむ予定だ。

レストランでは、美味しい料理と楽しい会話が彼女を待っていた。

リオは笑顔で友人たちとテーブルを囲み、日常の出来事や将来の夢について語り合った。


 夜が更け、自宅に戻ったリオはバルコニーに出て夜空を見上げた。

星が輝き、街の灯りが幻想的に光る光景は、彼女の心を穏やかにさせた。

この仮想世界の美しさと、自分が享受する幸福な生活にリオは感謝の気持ちで満たされていた。

彼女は未来への希望を胸に、穏やかな眠りに就いた。


 リオにとって、この仮想世界での生活は現実そのものであり、何不自由ない幸福な日々が続いている。

しかし、彼女はまだ自分が仮想世界に移行したことを知らない。

仮想世界のシステムが完璧に設計されているため、リオや他の住人たちは現実と仮想の区別がつかないまま、平穏な生活を送っているのだ。

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