始動! Awaiaulu!!
さてここで、俺達の得意なことを整理してみる。
まず俺は音楽関係が得意だ。実家が音楽教室をやっているし、音楽に関しては三人の中で一番早く触れている。他の二人は歌は上手く、何なら女声も問題無く出せるが、作曲が出来るのは俺だけだろう。
蒼司はダンスだ。蒼司の実家はダンス教室で、俺や菜月も通っている。しかし蒼司だけが頭一つ抜けていて、振り付けが出来るのは蒼司だけだ。
菜月は服飾やメイクに長けている。実家が服飾店をやっていて、菜月自身幼い頃から母親に色々仕込まれていたらしく、デザイン感覚が優れている。俺や蒼司も昔から菜月の着せ替え人形にされたし顔も髪も爪もいじられていたが、だからこそ菜月の才能を信じているのだ。
つまり、これだけの人材が揃って何が出来るかというと。
「アイドル活動に必要な要素が自分たちで賄えるだろ。まず『曲』」
「それと『ダンス』か」
「『衣装』とか『メイク』もね。なるほど~、確かに僕達だけでできるよね~」
正式なアイドル部であれば学校側の支援や他の部活の助けが借りられるが、僕達は正式なアイドル部ではない。同好会扱いだ。だから何もかも自分たちだけでやらなければならない。
幸いにして僕達はアイドル部に必要な物を揃えられる環境にあるから、それについてはクリアだ。ではそれを使って何をやるか。
「俺達の曲を作って、動画投稿する。もちろん衣装を着てメイクをキメて、しっかりダンスも披露する」
「なるほど。そして最初の曲というのは、ユニットを象徴する曲である事が多い。俺達の象徴となる曲か」
「楽しみだな~。でも、紅太君のことだから、それだけじゃないんでしょ~?」
まあね、と菜月に答えつつ、俺はもう一つのアイディアを披露した。
「うんうん、面白そうだね~」
「確かに、インパクトは抜群だろう。俺達の技量を知らしめると同時に、俺達は本気だという意思表示にもなる」
「そうだろ? それじゃ早速、活動開始と行こう!」
ところが、待ったをかけた人物がいた。その人物は、意外なことに菜月だった。
「その前にさ~、大事な事があるんじゃない~?」
「大事なこと?」
「僕達のユニット名だよ~」
ああ、そのことか。ユニット名は、すでに決めている。
「
「確かそれって、ハワイ語で『結びつける』とか『絆』って意味か」
「お、蒼司は覚えてたか」
「僕も覚えてるよ~」
なぜ僕達がハワイ語を知っていたのか。
実は僕達は母親が芸術関連の仕事をしている関係で、年に何回か三家族一緒に海外旅行に行っている。世界各地の芸術や文化に触れ、インスピレーションを得るためだ。
今まで行った海外旅行の中で、僕達が小学生のと気に入ったハワイは印象的だった。独特な文化が気に入り、簡単なハワイ語辞典まで買ってしまったのだ。
そういうわけで、いくつかの単語だけなら知っているのだ。
「語感が良いし、意味も俺達に最適だろ?」
「ああ。紅太の言うとおりだな」
「よ~し。それじゃ早速、Awaiaulu始動だね~!」
こうして、俺達Awaiauluのアイドル甲子園を目指す幕が上がったのだ!
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