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悠真は仕事上がりの電車で、珍しく
紗良は、大学時代のゼミ仲間の1人で、彼と同じく今は都内の職場に勤めている。
あの4年前の同期会にも参加していたがLINE交換したきりで、実際にやり取りをしたことは、これまで一度もない。それでも、悠真は紗良の利発そうで、目鼻のくっきりした気の強そうな顔立ちをすぐに思い出すことができた。
『今度、OBOG関東支部会やります』
そう始まる文面には、一緒に幹事をやらないかと誘う文言がある。
末尾にSNSのURLと、そこで大学ゼミOBOGの関東在住者のコミュニティを立ち上げたことが書かれていた。
彼女は、他の幹事やOBOG会参加者とのやり取りには都合がいいと思ったらしい。
悠真は、とっさに重荷に感じた。
平日が仕事で忙殺される分、週末等のプライベートはのんびりマイペースで過ごすのがいい。
彼が返したLINEのあまり乗り気でない意をくみ取った紗良は、すぐに返信を寄越してきた。
『聞いてよ。今回の世話役は私らの代になるんだけど、畑山君が独身なら暇だと思って私を指名してきたのよ。それって、おかしくない?笑』
同じく今もどうせ独身だと、しかもおそらく暇だろうと思って自分を誘ってきたらしいことについては、彼女は何も弁明する気はないのだろうか。
悠真は字面に目を走らせると、肩をすくめた。
翌日の夕方には彼女は、やはり在京で独身の同期仲間という理由で、副幹事としてサポートしてくれる約束を取り付けた2人のことを知らせてきた。
一人が、プロレスラーのような190センチはあろう背丈とがっちりした肩幅のある体躯に恵まれながらアニメオタクだった安村浩二と、そしてもう一人が、あの宮野祈里だった。
悠真の胸がざわめく。
「2人は、よくこの役目を引き受けたな。」
『意外でも何でもないよ。安村君、初め断ったくせに、祈里も支部会の世話役をすると教えたら、一転オレにもやらせてくれと来たんだよ』
悠真は、反射的に眉を寄せた。自然と返信も早くなる。
「どういうこと?」
『そういうことよ。って、あれ? 知らなかったの? 安村君、大学時代から祈里のこと、ずっと片思いしてたんだよ。それでらしいよ、祈里が都内にいると知って上京してきたんだ。』
それは初耳だった。悠真が祈里のことを気にするようになる、そのずっと前から安村が彼女に思いを寄せていたとは。唐突に、しかも意外なライバルの出現である。
ただ、そのことよりも確かめておきたいことがある。
「ところで、宮野、本当にまだ独身なのか」
『それ、安村君がしてきたのと同じ質問だよ?笑 気になるの?』
悠真は、紗良の末尾の言葉に思わず咳込んだ。
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