紗良とのやり取りを終えて、悠真はさっそくSNSのコミュニティに参加した。


 祈里がメンバーにいることが一目でわかる。

 近いうちに顔を合わせることになりそうなのもあって、まずは約束を守れなかったあの日のことをわびる内容で、SNSのメッセージ機能で書き送った。


 が、数時間経っても、翌朝になっても、さらに翌々日になっても返信はなかった。寂しさと空しさが悠真の胸を去来する。

 それでも、タイムトラベル先で今度こそ約束を果たし、そのとき祈里に自分のことを見直させることができたら、彼女は自分の隣にいてくれるかもしれない。そう思い直して、彼はあの日に遡ることに俄然思い入れを強くした。


 悠真は、主に都内の飲食店と取引している食材卸の会社に身を置いていた。

 朝は6時には出社して、朝礼及び打ち合わせで連絡事の確認があり、商品のピッキングと積み込みを終えしだい配送エリアに向けてトラックを走らせる。

 週明けは特に商品がだぶつき発注を見合わせる店があるため、幾分配送スケジュールにゆとりが出る。

 それでもルーチンになっていて、途中いつものコンビニに寄り、運転席で昼食を取りながら、電話の着信履歴や、営業所からの新規の業務連絡の有無をチェックする。そのまま、配送作業や電話対応に追われながら夜20時にようやく帰社し、伝票整理をしてから終業となる。


 このように半日を越える時間拘束で、機械のように仕事をこなす日が原則金曜まで続いた。

 

 上のポストがなかなか空かないため、営業所には定年間近の配送担当の営業マンもいる。

 悠真には同居家族がいるわけでもなく、週末は決まって、昼まで寝てから溜まった洗濯物をこなして食料品や日用品を買い込んでくる。ただそれだけで休日の半分が消えていく。

 没頭できる趣味もなく交際相手や身近に住む友人がいるわけでもない。そんな特に何の楽しみもないプライベートの過ごし方だと、職務が単純であるゆえ比較的気楽と思えるという以上に、仕事に意義を見つけるのは、そう簡単ではない。


 そこへ祈里との接点を再び得たことで、彼女と週末に会うために働くという意味付けができるかもしれない。

 その期待から来る高揚感は、何物にも代え難かった。


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