「あの日見た未来」完結あとがき
完結しました…。
思えば、この「あの日~」は、初めてのシリアスもので、プロットを練るうちにどんどん主人公が不幸になっていって…(苦笑)
肉親への恋心、同性同士、母親が栄養失調で亡くなる、というがんじがらめの中でもがき苦しむ主人公、というのが、できあがってしまいました。
でもこの作品で、改めて相手を想うこと、恋い慕うこと、大切に思うことって何か、というのを深く、深く考えるきっかけとなりました。
ユーリにとっての父親は、文字通りの肉親という意味もあり、同時に初恋の相手ともなりました。どうしても父親の心を手に入れたくて、亡き母親に自分を似せて、人の道を外れていても、父親と肌を重ね続ける…そんな「報われない愛」の相手だったんです。
でも、最終的に父親は、息子=亡き妻の代用としてきたことへの罪悪感から、最期にユーリに許しを請います。それは、ユーリ自身に、近親相姦という禁忌から父親自身、そしてユーリ自身を解放してあげたい、という願いだったんです。
ユーリにとっての母親は、作中にもあった通り、本来、息子が母親を慕う感情以外に、父親と関係を持つようになってからは、母親への嫉妬との板挟みになっていきました。
そんな中、領主館での「男娼」としての日々が続き、その更なる不幸の中、ようやく差し伸べられる救いの手こそ、のちに結婚するセレスだったんですが…。
とにかく本編の前半は暗い展開ばかりでしたね。
前半は、父親からも結局「母親の代わり」という自分、そして領主からは性奴隷としての、肉人形としての、「身体だけの自分」という、名前のないからっぽの自分自身に悩んできたユーリでした。
でもセレスが初めて、ユーリをユーリ個人として必要としてくれて、愛してくれたんですね。
だからこそ、ユーリはセレスを、本当に愛する相手だと思えるようになったんです。
番外編に関しては、かなり明るい方向で描きました。コメディタッチも多分に含めることができて、なんだか書いてて楽しかったです。個人的にはもっとローザに焦点を当ててあげたかったですが(笑)。ともあれ、楽しい未来を作ることができたと思います。
最終話については、ああいう形にしました。自身が父親となったユーリが、父親像と、現実の女性としての自分との間で苦しんできたことに焦点を当てました。きっとユーリにとっても、自身の父親、そして母親のこと、そして男娼としての過去は、そう簡単に割り切れるような過去ではなかったはずなので、ヘレンとアルベルトに告白して受け入れてもらう、という未来で完結としました。
なんだかあとがきというか、解説っぽくなりましたね。
ともあれ、ここまでお付き合いいただいた読者の皆様、どうもありがとうございました。
初めてのシンデレラストーリーを描きましたが、幸せをつかめてよかった…、と作者ながら思っています。
ご意見やご感想、もしあればお待ちしています。
読了、ありがとうございます。
あの日見た未来 さくら @sakura-miya
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