登場人物紹介(※ネタバレあり)

1.ユーリ(のちにユーリ=ティアノート)

主人公(♂)。ごく普通の少年だったが、級友によるレイプ、母親との死別をきっかけに、運命が大きく変わっていく。母親を失った父を慰めるために父親に抱かれ、次第に自分を母親と重ね合わせるようになる。それに喜びを感じるユーリだったが、愛する父親を殺されて失い、茫然自失のまま、やがて領主に男娼として働かされてしまう。

もともとの母親にそっくりの女の子のような顔立ちと長い黒髪から、領主たちに女の代わりとして性奴隷のように扱われていく。

そんな生き地獄のなか、思いを寄せていた父親との甘い日々の思い出に逃げ、心を閉ざしていくユーリは、次第に自分の性を嫌うようになる。

そんな不幸の連続の中、侯爵だったセレス=ティアノート(♀)に助け出され、亡き父親への恋心に苦しみながらも、セレスとの新たな愛を育み、結婚に至った。同性愛・近親愛に苦しみながらも、セレスという女性の伴侶を得た、シンデレラ・ボーイであると言える。


外見は華奢で長い黒髪、かなり童顔で幼く見え、かなりの美少女。体も小さく、身長は150センチ程度。

特に出会った頃はセレスから見ればかなり年下の女の子にしか見えなかった。


男娼として犯され続ける日々を過ごすうち、自分を犯し、またそれによる快楽に抗えない自分の性に対して強い嫌悪感を抱くようになる。セレスとの結婚、そしてヘレンとアルベルトが生まれたことによって、男であることへの嫌悪が少なくなったものの、あくまでも自分自身の性の認識は限りなく女性に近い。


物心つく前に父親と肉体関係を持ち、父親に恋心を抱いてしまったことへの罪悪感や背徳感を感じつつ、自分の心の性別と肉体の性別に苦しんできた。愛しい人=父親を目の前で殺されてしまい、永久にその想いが届かないと知り、領主館にいる数年間のうちは、硬い殻の中に閉じこもってしまった。

それに加え、大好きだった母親を失った悲しみと、その大好きな母親に嫉妬してしまう自分自身が嫌になっていた。

それを溶かしたのがセレスであり、同性愛・近親愛に苦しんでいたユーリを救い出してくれた人である。

セレスによってユーリは父親、そして母親との雁字搦めになった感情を解きほぐすことができたと言える。


設定ではレイプされ、母親を亡くしたのが10歳頃。

その後父親と関係を持ち、11歳頃に領主に拾われる。

そして数年間男娼をさせられ、13~14歳のころにセレスに助け出される。この時、セレスは18歳くらい。

結婚した年齢はユーリが16歳ごろを想定。セレスが20歳。

ユーリ16歳・セレス20歳で長女ヘレン誕生。

ユーリ19歳・セレス23歳で長男アルベルト誕生。


という感じなので、物語のラスト辺りはユーリ32歳・セレス36歳・ヘレン16歳・アルベルト13歳である。

ちなみに童顔のユーリは20代前半にしか見られない。


結婚式ではセレスの父は当初ユーリを男性として前面に出させる腹積もりだったが、どう頑張っても男装の美少女にしか見えないユーリは、ユーリ本人の心配をよそに、セレスの「妻」役に最適だ、と言う評価を得るに至る。さらに「お色直し」により胸元が大きく開いたドレスを着て、セレスと共にその姿を披露したことにより、出席者の男性の心をがっちりと掴んでしまった。かなりの美人だったセレスだが、その剣の腕前と近寄りがたい雰囲気は周辺地域では有名で、まさに「高嶺の花」だった。しかしまだ大人になる前の年齢のユーリには庇護欲を掻き立てる雰囲気を感じたようで、披露宴に出席した男性陣は心の中では「ぜひお近づきになりたい!」と思っていたらしい。

結婚してからはセレスの母によって貴族女性としての振る舞いを叩き込まれる。おかげで社交の場にも慣れていくことになるが、貴族の夫人にとってもユーリは非常に魅力的な存在であるようで、「男の子なのに女の子」である男の娘なユーリは、男女のカップルリングではあるが外見上はどう見ても百合カップルにしか見えず、男性陣以上にユーリのことが気に入っているようだ。


子どもにも恵まれ、長女ヘレンと、3歳年下の長男アルベルトの父親になった。一般的な父親の姿と、現実の自分とのはざまで苦しみつつも、セレスはもとより、長女ヘレンやその弟アルベルトの理解もあり、ユーリはユーリのまま、女性としての自己認識で振る舞うことができるようになった。王立学校での父親参観では、毎回周囲の父親や教職員らの熱いまなざしを集めてしまうことが悩みであるが、女性として見られることには大きな嬉しさを感じている。


ヘレンは外見はユーリにうり二つであるが、性格はセレスそのものであるかのように「非常にお転婆」であったことがユーリの頭痛の種であり続けた。ヘレンが大きくなるとセレスが剣を教え始め、それ以降はそれにヘレンのエネルギーが消費されるようになったおかげか、高等部に進学してからはずいぶんと「しおらしく」なったとようやくユーリも安心できるようになった。


ただ、子ども達の間でどうやら自分とどちらがお風呂に一緒に入るのかという果てしない争いをしているようで、それが困っている。

ユーリとしては自分が男であるので、そろそろヘレンと一緒に入るのは止めた方がいいといつも本人に言うのだが全く気にしていない…というかヘレン自身が聞く耳を持っていない。髪を洗って、とねだってきたり、相変わらず自分の事をユーリかあさまと呼んでくれるヘレンにとってはユーリは同性に近い存在らしい、と感じる瞬間である。

一方、アルベルトは同性なので気軽にお風呂にも誘えるのだが、中等部に進学してからは特にヘレンが止めに入り、喧嘩になってしまう。たまにヘレンの方が折れて、晴れてアルベルトと入浴できることがあるが、なぜか真っ赤になったまま向こうを向いてばかりいる。洗うだけ洗ってすぐに出ようとすることが多いので、いつも無理やり湯船につけてやるのだが、何故か向かい合わせで湯船に浸かるとアルベルトが固まってしまうので、仕方なく隣か背中合わせで湯に浸かっている。一度だけアルベルトの身体を洗ってやったが、それ以降は絶対にアルベルトが洗わせようとはせず、いつも断られる。いまだにユーリにはその理由がよく分からない。年頃の男の子は難しい、と最近思い始めている。


結婚して子供が生まれても外見ロリなのは変わらないようで、少々ドジっ娘属性もあることから、士官学校ではいまだにユーリが来ると特に女性職員から熱い歓迎を受けている。「ドジっ娘」「方向音痴」の汚名返上を狙っているが、その姿がさらに萌え要素を振りまいていることにはユーリ自身だけが気付いていない。


ローザという専属メイドがいるが、ことあるごとにユーリの風呂を覗いたりトイレの個室にまで押し入ろうとするなど、少々困ってはいる。ただ非常に優秀なメイドであることと、何だかんだ言ってユーリ大好き!な空気を隠しもしないローザが近くにいてくれて、嬉しくもあり、専属を外さないままにしている。


セレスが戦争の指揮を任されていた数年間、セレスの友人が経営する学校に通った。そこでできた友人は男女を問わず現在も交遊が続いている。




2.セレス=ティアノート(♀)

本作ヒロイン。ユーリの年上女房であり、女性でありながら侯爵を務める。金髪に青目の美人キャラ。剣が得意で王国でも3本の指に入る強さを誇る。

自分より4歳も年下の、少女の外見をした少年に恋をするあたり、もともと百合趣味があるのかもしれない。

侯爵家は領民を守る義務があり、そのために必ず軍に属していなければならない。情報部に属しており、諜報活動などを行っている。直属の部隊も有している。セレスの父も同様に軍属で、軍師を務めていた。父の代では部下もメイドも城に住まわせていたが、命を狙われることが日常茶飯事であり、部下が身を挺して守る場面が多かった。そのためセレスは周囲の反対を押し切り、一人で城に住むようにしていた。


セレスがユーリに出会ったとき、部下にあらゆる情報を集めさせ領主を捕えることに成功する。ただ、その際にユーリと父親のことも知ってしまう。最初は身寄りのないユーリを助けてやりたい一心だったが、徐々に心を開いていくユーリに、だんだんと惹かれていった。


常に命を狙われる身ということもあり、どこか自分の命も含めて投げやりな部分もあったが、ユーリと出会ってそれが変わったようだ。ユーリとの日々を守りたいと思うようになり、それがセレスの考え方を前向きに変えていった。ユーリが文字を読めない事実は衝撃的であり、そうと知ったセレスは、ユーリにもきちんとした教育を受けさせてやりたいとずっと考えていた。セレス自身が出征している間、知人の女性にユーリの教育を頼むが、ユーリの寂しさを紛らわすためでもあった。身を斬られるほどにセレス自身も寂しさを募らせていたが、出征の際にユーリが切り落とした髪束を抱きしめ、寂しさに耐えた。生きて帰ったら結婚しようと密かに想いつづけ、それがセレス自身の最大の心の支えとなっていった。


セレスにとってはユーリが初めての恋であり、それまで全く興味がなかった恋愛に自分が身を焦がすようになるなど…と、戸惑いもあったようだ。ずっと過去に囚われていたユーリを、それでも辛抱強く待っていたが、それはユーリへの深い愛と、絶対に自分に振り向かせてやる、という思いもあったようだ。お互いの気持ちを確かめ合い、戦争と言う大きな障害を経て、ようやくユーリと結ばれたセレスは、結婚後も相当なヤキモチ焼きな一面を見せていた。いつまでも可憐なユーリとは何年たっても仲睦まじく、人前であってもユーリにキスをするのは今も変わらない。

ちなみに娘のヘレンにも自身の恋愛ごとをねだられるままによく話すが、「見た目も心も女の子な男の子=ユーリ」に恋をしたセレスの恋愛観が、ヘレンにも多大な影響を及ぼしていたのだとユーリとセレスが知るのはごく最近である。

余談だが、セレスがユーリをゲットして以来、メイドたちの間で百合カップルが絶賛増加中らしい。


士官学校ではたくさんの候補生を鍛え上げ、鬼教官として恐れられている一方で、面倒見がよく、非常に良い教官である。美人でスタイル抜群であることもあり、彼らからの人気は異様に高い。中には着替えを覗こうとした猛者もいるようだが、セレスの直属部隊に処理されかけたという話があるとかないとか。



3.ヘレン=ティアノート(♀)

ユーリとセレスの間に生まれた第1子。

理知的で強いまなざしは母親のセレスに強く似て、対して外見はユーリとそっくりな艶やかな黒髪の、ティアノート家の長女である。


性格はセレス似で、剣にはめっぽう強く、同級の男子であっても歯が立たないほどの腕前。セレスが女性でありながら家督を継いでいることもあってか、高等部に進学してからは将来的には弟のアルベルトではなく自分が家督を継ぐのかもしれない、という予想と期待をいだきながら剣の稽古にいそしむ毎日である。


母親であるセレスには女性としてというよりもむしろティアノート家当主としての姿にあこがれを抱いているようで、仕事ぶりに興味を持っている様子であり、セレスと剣の稽古をするのが大すきである。


ユーリが剣の稽古を始めてからは練習相手になってやることも増えたが、抜けているところが多いユーリが剣を振り回していることに内心冷や冷やしており、いつも途中でユーリを止めようとする。


一方、ユーリには優しく可憐な母親の姿を見ており、高等部に進学してからもユーリのことが大好きである。セレスが侯爵としての業務が多忙で、たいてい参観日にはユーリが来るのだが、父親参観の日にユーリが来た時の教室中の異様な熱気は高等部に進学してからも変わらない。男女関係なく同級生から熱烈にユーリに自分を紹介してほしいとお願いされるのだが、ユーリのことが自慢でありつつも、嫉妬している日々である。

ちなみに高等部に進学した今でも一緒にお風呂に入るほど仲がいい。いつもお風呂上がりにユーリに髪を梳いてもらうのが習慣になっており、ヘレンが大好きな時間である。セレスに梳いてもらうのも好きだが、同じ髪色のユーリの方に寄っていくことが多い。ちなみにユーリとはお風呂にも一緒に入っているが、弟のアルベルトがユーリと一緒に入ろうとすることだけは許せないのでいつも邪魔をしている。弟がユーリを邪な目で見ているような気がしてならないためにそうしているのだが、ヘレン自身も雪のように白く柔らかな肌を持つ妖精のような外見のユーリが胸にタオルを巻いて入浴している姿にドキドキしていることは誰にも言わないでおこう、と思っている。


そんなユーリが大好きなヘレンは、セレスから聞かされるユーリとの大恋愛話が大好きであり、母親のセレスがユーリと仲睦まじく過ごしている様子に非常に強く影響を受けている。セレスに愛されているユーリに憧れを抱いていて、いつかセレスのように、「女の子のように可愛い男の子と結婚したい」とユーリとセレスに宣言したが、なぜユーリが目を真ん丸にして驚いていたのかよく分からない。



4.アルベルト=ティアノート(♂)

ユーリとセレスの第2子で、ティアノート家長男である。姉のヘレンとは真逆で、性格はユーリに似て優しく温和だが、外見はセレスに似て透けるような金色の髪をしている。長男ではあるが文学少年であり、剣の稽古ではヘレンに勝てたためしはない。悔しいという気持ちもあるものの、姉とは得意分野が違うんだ、と割り切っている面もある。

中等部に入ってからは本好きがさらに加速し、城下町にある王立図書館が大のお気に入りである。将来は研究者を夢見て、いろんな本を読み漁っている。

ユーリ自身から、過去の男娼としてのことを聞かされ、衝撃を受けたものの、それでも自分たちの大切な父親であり母親であることには変わらない、と考えているし、今まで以上にユーリを大好きになった。

ただ、時々ユーリの仕草の中に艶めかしさが垣間見える瞬間があり、それを思うと得心するものの、年頃の男の子としては少し複雑な気分である。参観日にユーリが来るときはとても嬉しい半面、他の男子がユーリに夢中になってしまうのが最近はとても気に入らない。そんな時は必ずその後にユーリに甘えてしまうのだが、それが姉のヘレンと同じ行為であることはお互いに知らない。


中等部の同級生に好きな女の子がいるが、その子がユーリに似ているからだ、とはアルベルト自身も気づき始めていて、余計にユーリを前にすると恥ずかしくなってしまう。ユーリが一緒にお風呂に入りたがるが、濡れた髪と上気した表情で自分を見つめてくる、可憐な美少女にしか見えないユーリに対し、なんだか変な気持になってしまいそうで、内心は一緒に入りたいものの、そろそろ一緒に入るのはやめなければ、と思い始めている。



5.ユーリの母親(故人)

貧しかったユーリの家庭を支え続けた苦労の人だった。

過酷な環境にもかかわらず父とユーリを支え、ユーリを学校に通わせ続けてくれた。ユーリにとってかけがえのない人だっただけに、栄養失調で他界してしまってからは、長い悲しみと葛藤を感じ続けた相手である。


父親と関係を持つようになってからは、父親がユーリの姿に亡き母親の姿を見ていることに、長く苦しむこととなった。セレスとの出会いによってその心が融解し、父に感じていた愛情と母親への愛情と嫉妬の入り混じった複雑な感情を整理することができ、閉じこもっていたユーリが前に進むことができた。


今ではユーリは母親を穏やかな気持ちで思い出すことができている。過去、父親とのことがあったために、母親にそっくりの顔立ちに、暗い気持ちになることもあった。しかし、母親に似たこの姿があったからこそセレスとの愛を育むことができたのだと前向きに考えている。


ユーリにとっては、級友からレイプされる以前からも、性的にいたずらされかけるような嫌がらせはあり、母親に似ていることを疎ましく感じることもあったが、今ではますます若いころの母親に似てきた自分自身を見て、母親との繋がりを感じて嬉しく感じている。形見の髪飾りは今でも大切にしまっていて、生家に墓参りする際は必ず身に付けている。


母親自身は非常にユーリが可愛く、貧しいがゆえにいじめに遭ったり、また性的な嫌がらせを受けていることは共に入浴することで勘付いていたが、ユーリ本人がSOSを出さなかったことから、かなり我慢をして見守り続けた。倒れてからは無理をしないようにしていたが、それでも自分自身よりも夫と息子を生かすことを考えてしまい、それが自身の命を縮めることになっても、それを変えることはなかった。


貧しさは決して彼女にとっては苦労ではなく、夫と息子に十分に愛されて生きていくことができた、と感じていた。それがせめてもの救いに違いない。



6.ユーリの父親(故人)

ユーリの母親がまだ生きている頃は、勤勉な性格で、妻と息子を支え続けていた。しかし徐々に彼女が弱っていき、ついには息を引き取ったことで、それまで耐えてきたことが音を立てて崩れ去り、悲しみに暮れるだけの日々を送るようになった。


徐々に酒に溺れるようになり、畑にも出なくなっていった彼が、ある時に見たユーリがとても亡き妻に似ていて、一気に堪えていた感情が吹き出してしまった。まるで妻がそこにいるかのように見えて、熱に浮かされたようにユーリのことを妻の名で呼び続けた。悲しみに暮れる父親を見かねていたユーリはそのまま父を受け入れることになるのだが、それがユーリと、そして父親にとっての愛と苦しみの連鎖の始まりでもあった。


ユーリが男で、自身の息子であるという認識もあった。近親相姦という禁忌を犯していることを認識していた。しかし、それでもユーリとの関係をやめることができなかったのは、彼自身も、そしてユーリも、最も身近な存在を喪った悲しみを忘れていたかった、ということかもしれない。


父親はどんどんとユーリにのめりこんでいった。まだ十代前半のユーリは、もともと妻に似ていたこともあり、女の子のような可愛らしい外見をしていたこともあいまって、余計に亡き妻を彷彿させた。妻の遺品を整理していると髪飾りが出てきて、それをユーリにつけてやると、本当に妻にそっくりで、妻が生き返ったような気がして嬉しかった。酒に溺れ、ユーリと肉体関係をつづける日々を送っていた父親にとっては、だんだんと男同士という感覚がなくなっていた。彼にとってユーリを抱くということは、亡き妻を抱くことであり、ユーリを見てはいても、亡き妻の幻影だけを探し続けていた。


だからこそ、父親はユーリの翳りのある笑顔に気付かず、ユーリ自身を見て欲しい、愛してほしいという心に気づくことはなかった。ユーリがそれでも父親を拒否できなかったのは、自分の気持ちに気づいた時点で、すでに抜け出せないくらい父親を愛してしまっていたからだろう。


そんな日々を送っていたが、徴収官がやってきて、ユーリに刃を向けた時、頭で考える前に身体が先に動き、ユーリを庇って剣を受けていた。薄れゆく意識の中ユーリに抱き起されて、死期を悟った彼はその時に、今までユーリに自分の弱さを押し付けつづけたことを謝罪しようと思った。同時に、ユーリにだけは、父親との関係などを捨て、一人の個人として愛する人を見つけて欲しい、という願いが湧き起こり、「許してほしい」、という言葉だけを伝えて、息絶えてしまった。


結果的にそれからユーリは父親が自分とどこまでも堕ちていく道を選んでくれなかったこと、そしてユーリ自身を愛してくれはしなかったことに長い間苦しむことになる。それに加え、領主館での数年にわたる男娼として犯されるだけの日々の中、父親への思い出だけがユーリにとっては救いだった。


セレスとの出会いによって、ようやくユーリは父親に対する気持ちを整理することができた。本当に愛する人に出会ったからこそ、その人を喪う辛さが理解できるようになったユーリは、今なら父親が母親を喪った本当の悲しみの深さを理解できている。もしかしたら、父親にとっては、母の代用としてのユーリと結ばれていた期間は、仮初めであったとしても、束の間の幸せだったのかもしれない。そうと考えると、愛情が裏返した父親への恨みが消えていくのを感じている。



7.ローザ

ユーリの専属となった侍女。元はセレスの母親の侍女であったが、セレスが婚約したことを機に、セレスが自身の周りに侍女を配置するようになったことがきっかけでユーリに出会うこととなった。ユーリを一目見た時からその可憐さに心を奪われてしまい、セレスとセレスの母に熱烈に自らを売り込み、晴れてユーリの専属侍女となることができた。


侍女としての能力はかなり高い方であり、そのこともあり信頼は厚い。ただ、ユーリのことを慕うあまり、ユーリに対して情欲を抱いていることなどを本人の前で言ってしまったり、トイレの個室に入りたいと言ってみたり、ユーリの入浴中にはいつも乱入したりなど、いろんな場面で暴走しがちになる。本人曰くユーリの羞恥で赤く染まった表情や結婚式の衣装替えでユーリに疑似的な乳房を取り付けた際の様子は克明に記憶しているとのこと。

ユーリを前ではわざとこういったシモの話を嬉々としてしている節があり、その度に羞恥で真っ赤になった顔でさけぶユーリを見て、とても満足している。


こんな変態侍女だが、何だかんだ言って、ユーリは甲斐甲斐しく自分の世話をしてくれるローザ自身に対して感謝の気持ちを持っているし、非常に優秀な人物ではあるし、何よりも、悩みがあるときなどには何も言わずに抱きしめてくれたり、とても主人であるユーリに対して気遣いをしてくれる、よき友人でもあるという認識から、多少(かなり)変態な面はあるけれど、ローザのことを専属としてずっと傍にいて欲しいと思っている。


年齢はセレスよりも若干年上。眼鏡をかけた美人侍女をイメージ。



8.セレスの母親

ユーリが抱える特殊な背景をすべて理解したうえでセレスとの結婚を後押ししてくれた人物。結婚後はユーリを貴族社会に迎え入れるために徹底的に女性教育を行い、夫人方に囲まれる生活に慣れさせた。


最終的にローザをユーリにあてがったのは彼女である。ユーリからはローザがいかに変態であるかを訴えられるが、その横で涼しい顔をしているローザを見るのが内心楽しくてたまらない。そう言うユーリも本気でローザを嫌がっているわけではないと見抜いているので、ユーリとローザを見て、いつも「いいコンビだ」と思っている。


ユーリを紹介されるまでは、娘(=セレス)に全く異性を感じさせる素振りがないことが気がかりで仕方がなかったが、ある日突然紹介された人物が、かなり年下の(というより幼い)、美少女にしか見えない少年だった、ということに驚いた。娘の百合趣味を疑いつつも、娘に本気で好きになった人ができて心底安心した。


現在、2人の孫に囲まれて幸せを感じているが、長女のヘレンがセレスそっくりの性格になってしまったことに可笑しさを感じている。



9.セレスの父親

前侯爵。元軍司。現在は侯爵としての仕事は娘のセレスが引き継ぎ、自分自身は士官学校の教官として後進の指導に当たっている。

娘の将来を考えると家督を譲る、ということには抵抗があったが、侯爵家の義務として、涙を飲んでセレスに剣を教えた。結果的に王国内で3本の指に入るほどの腕前を持つに至るのだが、あまりにも強くなりすぎた娘の婿には一体誰がなるのか、ということをずっと気にしていた。

そこへ電撃的に現れた、可憐な少女を婚約者だと紹介された時、あまりにも異性に興味がなさ過ぎてついに同性に興味を抱いたか、と動揺を悟られないようにすることに必死だった。ユーリが男の子だと分かるが、それでも出自などから娘の婿として本当に適しているのかを心配するあまり、当初は結婚には猛反対していた。しかし妻からの熱烈な説得もあり、またユーリ本人がセレスが持ち合わせていない可憐さ、儚さを匂わせ、もう一人娘ができたかのような嬉しさも感じ始め、最終的にはユーリの人柄を見て、セレスとの結婚を許した。

結婚式では、いくらユーリが女として生きているとはいえ、きちんと婿として迎えるべきだ、としてタキシードを着せた。しかしながら、招待客にとってはそんな姿すら少女にしか見えず、逆に男装した美少女にしか見えない婿のことを熱の籠った目で見ている彼らを見て、ユーリのことを可愛いと素直に認めていいんだ、と密かに自認し始めた。ただ、ほかの男性客がこぞって「ぜひユーリ君を紹介してほしい!」と熱烈に申し込むので、それに対してはまるで娘を取られるような感覚がして、断固拒否をしている。

結婚式後は、いつかチャンスがあったら一緒に風呂に入りたい、と思っているが、絶対に妻や娘に反対されることが目に見えていてため息ばかりついている。いつかユーリに頼み込もう、と考えている。



10.校長先生(♀)

セレスの学友であり、爵位を有する家庭に生まれた女性。侯爵となることを運命づけられていたセレスの友人として、彼女自身も社会に貢献できる何かをしたいと考え続け、私立の学校を作ることを決意した。

男女・年齢の別なく、教養と礼儀作法を学ぶための教育を行うことを方針とした。小規模ではあるが、評判の高い学校へ発展している。ユーリが無事卒業し、セレスと結婚した後はティアノート家からの教育援助も得られた。

ユーリの特殊な背景はセレスから大まかには伝えられていたものの、一目見た時に、ユーリの外見から来る可憐さや、その内面が彼女自身を惹きつけた。スポンジのように吸収していくユーリを育てていくことに、教師として大きな喜びを感じた。セレスが戦争に行っている間、ユーリが不安に感じている時には相談に乗っていた。2人が無事結ばれて、本当に喜んだ人物の一人である。



11.ユーリの同級生(セレスと出会った後に通った学校での友人)

年齢の幅が広く、ユーリとの歳の差は3歳~6,7歳程度。男女も入り混じっているが、女の子の方が多い。

彼らにとってはユーリは年上だが不思議な雰囲気の「お姉ちゃん」として映っており、女の子からは憧れの対象として、男の子からは綺麗な異性として映っていた。

だいぶ仲良くなってから、女の子たちはユーリから「気付いているかもしれないけど…」という断りがあった上で自分が男であることを打ち明けられたが、全く信じることができずに思わずユーリの胸をみんなでまさぐってしまい、その時のユーリの羞恥と快感に悶える表情に、胸が高鳴ってしまったことは誰にも言えない秘密だ、と思っている。

一方、その後に男の子の同級生のジャックがユーリとぶつかって、その拍子にジャックがユーリの胸を思いっきり掴んでしまう。真っ赤になったユーリは許してくれたが、決して柔らかくはなかったその胸の感触に不思議だと感じつつも、悶々としてしまう結果となった。

ちなみにその様子を見ていた女子の間では、当初ジャック×ユーリというBLな妄想でかなり楽しまれていたが、卒業後数年たってユーリからセレスを紹介された時、逆にお姉さま(=セレス)に可愛がられる女の子(=ユーリ)、という百合的な構図が似合いすぎて、百合趣味に走る子も出始めたとかそうでないとか。



~悪役たち~

12.領主・徴収官たち

ユーリの生家を納めていた人物。年貢率を異常なまでに高く設定し、セレスには実際よりも低い数値で改ざんして報告していた。

たいへんな好色家でもあり、多くの女性を食い物にし続けていた。ある日徴収官からとてつもない美少女にしか見えない少年がいると聞き、それに興味を抱いたことからユーリにとっての地獄の日々が始まった。

ユーリを男娼に仕立て、性奉仕をさせながら、法外な年貢を納めさせ続ける、という行為はやがてセレスの目に留まり、直属部隊に処理される結果となった。

捕えられてからは、セレスとユーリの暗殺未遂事件を起こす。セレスの直訴により、即処刑ではなく、直属部隊による長期間にわたる拷問刑が科せられた。長い拷問の後、自我崩壊が確認されたのち、全員が漏れなく処刑された。

治めていた領地はユーリの生家がある場所ということもあり、ティアノート家が預かることとなった。セレスとユーリによる領地改革が進み、荒れ果てていたユーリの生家付近も、現在では緑豊かな土地に生まれ変わっている。



13.ユーリの同級生(もともと通っていた学校の同級生)

同じ領主の元で生活していたため、決して豊かではなかったが、ユーリと比較するとかなり生活は安定している方であり、ユーリのことはいつもいじめの対象であった。

ある日ユーリの方からパンとチーズをめぐんでほしい、と懇願され、もともと女の子にしか見えないほどきれいな顔立ちをしていたユーリに劣情を抱く者も多かったこともあり、集団でのレイプ行為に走らせた。

その後も数回にわたってユーリに対して性的な暴力を働いたが、ユーリが領主館にさらわれてからは、同じように女の子っぽい年下の男子を囲んでレイプする、という行為を続けていった。

その事が学校側に露見し、即刻退学処分となった。

ちなみにその話を聞いたセレスがブチ切れて、直属部隊に全員の居場所を突き止めさせ、全員をひとりひとりボコボコにしていったことはユーリには秘密にしている。

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