わが主、ユーリさまの魅力
こんにちは皆さま。ローザでございます。ユーリさまの専属メイドとして、ユーリさまのあらゆるサポートを私が責任をもって行わせていただいております。
なにせユーリさまは、その可憐なお姿で、男女を問わず、万人を虜にしてしまいます。
行く先々で人々の目を奪い、道行く人は必ず足を止め、ユーリさまを振り返ってはため息をつく。
そんな、まるで永遠の乙女のようにお美しいユーリさま―。
玉のようなお肌が桜色に染まり、ちらりと覗く肩のラインや髪を結いあげたうなじのラインが煽情的で―
ごくり。
…っと、いけません。昨日の湯上りのユーリさまの煽情的なお姿を思い出して思わず生唾を飲み込んでしまいました。
たまりません。あれで男性だなんて…
…
…
なんて素晴らしいのでしょうか!!
興奮して鼻血が止まりそうもありません。
しかしこのまま放置すると、ユーリさまが私を心配してくださって、優しく鼻血を拭いてくださるかもしれないので放置してみましょう。
話が逸れましたが、専属としての私の仕事は、ユーリさまのサポートに他なりません。
主人であるユーリさまがお困りの際は、いかなる要件にも対応できなければならないのです。
ですから、先日王城でユーリさまが不本意にも迷子になられた翌日からは、ユーリさまが王城にお出かけになる際に迷子にならぬよう私が手を握ってご案内差し上げますし、途中でもしお手洗いをお探しになられると、私も同室させていただき、ユーリさまが心行くまで用を済まされるのを間近で確認させていただくのも私の役割である、といつもユーリさまに進言するのですが、残念ながら聞き入れてくださいません。
でもお顔を真っ赤にされながら涙目になって拒否するユーリさまを見ていると、思わず劣情を抱いてしまうのは胸にしまっておかなければならないでしょう。
さて、私がユーリさまにお仕えするようになった経緯を簡単にご説明させていただきます。
元々はセレスさまのお母上である奥さまにお仕えしていましたが、セレスさまがご結婚される際に、それまでセレスさまがおひとりで住まわれていたお屋敷に、正式に使用人として多くのメイドが配置されることになったのです。
それが、ユーリさまと私が出会うきっかけとなりました。
それまで働かせていただいていた、ティアノート家の本家のお屋敷から、セレスさまのお屋敷へと移動しながら、いったいセレスさまとご成婚される方はどのような貴族の方なのか、と他のメイドたちと騒いでいました。
そして、いざ私たちがセレスさまの屋敷に配置される、その初日に―
艶やかな黒髪が美しい、まるで妖精のように可憐な少女が出迎えてくれたのです。
まるで、その方の周りだけが切り離されているかのように感じました。
年の頃は10代の前半にちがいない、あどけない様子のお顔。
明らかに性に目覚める前の幼いご様子であるにもかかわらず…
なぜかその仕草が、瞳が、唇が…
私たちを捉えて、離そうとしないのです。
少女の外見をしていながら、成熟した女性をも思わせる雰囲気に、みな戸惑ってしまいました。
一体、この少女は誰?
セレスさまとどのようなご関係が?
だれもがそう思っておりました。
すると、その少女の方を親しげに抱きしめるセレスさまが、その少女の背後からいらっしゃいました。
やけに親密な雰囲気だな、と思う間もなく、私たちは目を見開くことになります。
なんと―セレスさまがその少女に、口づけをなさっているのです。
いきなり目の前で繰り広げられる熱い光景。
その少女の妖艶さに、思わず食い入るように見入ってしまいました。
熱いため息を交わされるおふたりを遠目に見ながら、私たちは思わずにはいられませんでした。
やはり百合になってしまわれたか―と。
あぁ、いくらセレスさまに言い寄る男どもがみな不甲斐なく、
『私に一太刀でも浴びせることができれば茶くらい付き合ってやろう』
と公言するセレスさまに、その一太刀を浴びせようと多くの者が挑戦しても、鬼神の如くお強いセレスさまに、そのようなことができる殿方は一向に現れなかったとはいえ。
セレスさまはセレスさまで、特に恋愛に積極的になられているご様子が見られなかったため、私どもは密かに『百合趣味であられるのでは…?』と興奮し合っていたとはいえ。
さらに、そのセレスさまが、今までお屋敷に誰も雇わなかったのに、ここ数年、どうやらある少女がメイドとして雇われているらしい、との噂が囁かれ、いよいよ私たちの噂の通りなのか、と期待していたとはいえ。
ですが、まさか、まさか本当にそうだなんて…!!
と、ひとりで興奮し、鼻の奥を熱くしながらお2人の口づけを凝視していると、なんとその少女の驚愕の真実が告げられたのです。
セレスさまが照れながらこう言った時の表情は、忘れられません。
「し、紹介しよう。わ、私のこ、婚約者の、ユ、ユーリだ」
「―!!こ、婚約者!」
「せ、セレスさま!や、やはり百合に走られてしまったのですね…!」
「で、でも同性婚はこの国では認められてはおりませんよ!?」
改めてセレスさまの口から、少女が婚約者だと聞かされてショックを受けていると、その少女が顔を赤らめて否定します。
「ち、ちょっとセレスさま!や、やっぱりみなさん誤解されてるじゃないですか!」
「ん?…そうか?」
「そうか?じゃありませんよ!『百合に走ったー!』って嘆いてるじゃないですか!」
「む?違うぞお前たち。ユーリはちゃんと私の婚約者だし、結婚もできる。」
「―え?」
「つ、つまり…」
その少女が恥ずかしそうにうつむきながら、セレスさまに腰に手を回され、真っ赤になりながら、自己紹介してくださいました。
「あ、あの…は、初めましてみなさま。わ、私は、せ、セレスさまの…こ、婚約者の…ユ、ユーリともうします。お…男、です…」
「お―」
「「「男?」」」
ま、まさか!
こんなに可憐で妖精のような美少女が、男の方だなんて!
とても信じられない、と私たちがユーリさまをまじまじと見ていると、セレスさまが思いついたようにこう言われます。
「ふむ。信じられないのも無理はないが…どれ、ユーリ…」
と、セレスさまたユーリさまの背後に回り、後ろから抱きしめられて何やら大変嬉しい…いえ、妖しい光景を繰り広げられます。
「い、いやですよ!?な、何をなさるのか分かるんですから!」
「む?いいではないか。何も股間を晒すわけではない」
「それこそ嫌ですから!…って、あ、あっ!んん…!」
「ふふふ、よい感度だな」
「や、やめ…」
後ろからセレスさまに衣服の中に手を入れられ、胸をまさぐられるユーリさま。その拍子に、ちらりと見えてしまった、平らな胸。
メイド一同、この光景を目に焼き付けておこう、と心に誓ったのでした。
さて、そんなユーリさまにお仕えすることになり、私たちの日々は、大変、癒されるものになりました。
特に何と言っても、ユーリさま専属であるこの私には、他のメイドには許されていない、ユーリさまの寝室への立ち入りも可能です!
それが、どんなに役得で幸福に満ちたことなのか!
数ある至福のひとときの中でも、選りすぐりの出来事を紹介いたします。
まずユーリさまは寝起きがよろしくないことで有名です。
普段から食堂に降りてこられる際も、どこか夢うつつの時が多く、よくボタンを掛け違えておられるので、さりげなく私がなおして差し上げるのですが、その時の驚いた顔と、真っ赤に茹で上がったお顔がたまりません。鼻血が止まりません。
しかし、朝の
私の役目は、ユーリさまの寝室へ赴き、扉をノックすることから始まります。
たいていは、3度くらい大きく呼びかけると、しばらくたってからユーリさまが寝ぼけまなこのまま起きられるのですが…
いえ、この時のユーリさまのお顔もかなり可愛らしいので、毎日毎日が楽しくてしかたがないのですが…私が言いたいのはこれではないのです。
寝起きのユーリさまのお顔をすら凌ぐ出来事が、まれに発生しうるのです!
何かと言うと…セレスさまと毎晩のように『いたして』おられるため、その声がたまに漏れ出ているのですが…もっと
なんと、ユーリさまを起こして差し上げると、その晩の夫婦生活で使用したと思われる、『ベビードール』を纏われたまま出てこられることがあるのです。
実は今朝がそうだったのです。
当のご本人はまったく気づいておられません。
なので、私は当然、じっくりと観察させていただいてから、そっとユーリさまの耳元で、こう助言差し上げるのです。
「…ユーリさま」
「…ふぁい?な、なぁにローザ」
…いけません。なんて可愛らしいのでしょうか。
2児の母…いえ、もとい父となられたお方だとは到底思えぬこの可愛さ。
ですがここは心を鬼にして言わせていただきます。
でなければ、他のメイドたちの目にも触れることになるのですから。
ユーリさまのこのお姿は、セレスさま以外では専属である私だけが目にしている。
それが、とてつもなく嬉しいのです。
「…ごほん。ユーリさま。昨夜はずいぶん楽しまれたのですね?」
「…?」
と、私の言葉にすぐ反応なされないユーリさまですが、私の視線に気づいて、ゆっくりとご自身のお姿…つまり、面積の少なさを競うかのような煽情的な下着、そして真っ白なユーリさまのお肌を極薄の布地を通してはっきりと視認できる、ベビードールのお姿なのだ、とご理解いただけるのに要する時間は、たっぷりと1分ほどでしょうか。
それから、全身が真っ赤になっているのが分かるほど照れてしまって、勢いよく寝室の向こう側へと再び飛び込んでいったかと思うと
「…いやあ~~~!!!」
という悲鳴がお部屋の中で響くのです。
うふふふふ。
や・く・と・く(ハート)
さらにユーリさまの素晴らしいところは、これが、何度でも起こり得る、ということなのです!
うふふふ。
そのあと、恥ずかしがってお部屋から出ようとしないユーリさまをお迎えに上がると、決まってお部屋の隅っこで、真っ赤になって毛布にくるまれた状態のユーリさまを発見するのです。
「…ユーリさま。」
「な、な、なんですか!あ、あ、あれは別に、わ、私が着たかったんじゃなくて、せ、セレスさまがどうしてもって言うから着てあげたのであって…」
「…左様でございますか。セレスさまのご要望がいかに羞恥心をあおるものであっても、忠実にお守りするのはさすがユーリさまでございます。あのベビードールのお姿の妖艶さはまさに見るものすべてを発情させ理性を崩壊させる…」
「お、お願いだから黙ってくださいローザ!!」
「私はユーリさまがいかにいやらしく魅力的であられるのかをご説明させていただいたのですが」
「わ、私はいやらしくありません!そ、そ、そういうことは言わなくて結構です!!!ちょ、スカートを捲くらないの!!い、いますぐお風呂に入ってらっしゃい!!」
あぁ、そうやって私を罵られるそのお言葉にもゾクゾクしてしまいます。
さすがマイマスター。
今日も一日、ユーリさまにお仕えいたします。
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