第1部 最終話 あの日見た未来

あの別れから数年が経った。

セレスさまが出発してからしばらくして、この国が他国と交戦状態になったと知らせがもたらされた。

しばらく戦争は続いた。


あの別れから少し経って、

私は自分の部屋の机の引き出しが少しだけ開いているのに気付いた。

何だろう、と気になって開けてみると、出てきたのは一通の手紙だった。


逸る気持ちを押えて、中を開ける。

そこには、セレスさまが書いた文字が並んでいた。


震える手で、ゆっくりと読んでいく。

難しい部分もあるが、だいたい読めた。


――ユーリへ。

突然のことで、さぞかし寂しい思いをさせただろうな。

本当に済まない。

そなたに心配をかけたくないと思って、

ずっと秘密にしておいたのが、裏目に出たかも知れぬ。


王宮からはかなり前から打診されていた。

ティアノート家は代々戦術を得意とする家系でな。父上も、王国の軍師だったのだ。

私の場合は戦術というより情報操作の方が得意だがな。

今王国の情勢は危うい。

他国に攻め入られると、どうなるか分からん位に。

しかし、その情報は、一部の人間しか知らぬ。

だから他国が情報収集をし、有利とばかりに我が国に軍事行動を起こされるようなことがあっては遅いのだ。

それを未然に阻止するために、私が選ばれた。

なに、心配する必要は無い。

最前線に立つわけではないのだから。

どんと構えて待っていてほしい。


さて、私が留守にする間、とある人物にそなたのことを頼んでおいた。

しばらくすると、先方から迎えが来るはずだ。

ユーリ。

まだ若いそなたには未来がある。

しっかりと学べ。

教育は、一生の財産だ。

生きるためのすべを教えてくれる。

私に仕える使用人としてだけでなく、ユーリという人格を育てるために、

そこへ行って、徹底的に学んで来い。

つらいかもしれんが、きっとそれがそなたの血となり肉となる。

頑張ってほしい。


寂しいだろうが、必ず戻る。

愛している。

セレス―


「愛している」という文字。

震える指でなぞりながら、セレスさまがどんな気持ちで書いたんだろうと思うと

私の胸が張り裂けそうだった。



セレスさまが手紙で書いていたように、数日後にある人物が城を訪問した。

ある学校の校長だった。


――よろしくね、ユーリさん――


と、校長と名乗るその若い女性は手を差し出した。

いぶかしみながらその手を握り返すと、自己紹介してくれた。

セレスさまとは旧知の仲であるようで、私のことも知っているようだった。

出発前に私のことを頼まれていたようだ。

真実は知らないようだが、私が特殊な事情で学校に通えていないことをセレスさまを通じて聞いていたようだった。

ぜひ私の学校でともに学びましょう、と言ってくれているが、私は躊躇してしまった。

嬉しい申し出だった。

元々貧しくて満足に学校に通えていなかった私。

級友たちに「あんなこと」をされ、

そして領主に連れ去られてからは、

私からは学ぶための一切のものが奪い去られた。

読み書きなど必要なく

計算なども必要なかった。

ただ必要だったのは

男根のしゃぶり方と

肛門で受け入れることだった。

セレスさまに救われてから、少しずつ勉強した読み書き。

楽しかった。

もっと勉強してみたい、と思っていた。



――セレスさんがね、声を震わせて言っていたの。

あの子に、どうか普通の教育を受けさせてほしい、って。

私が帰ってくるまでの間、あの子を預かってほしいって。

私の、大切な人なんだ、って――


――セレスさま――


その言葉が決意させた。

こうして私は、もう二度と戻れないと思っていた

「学校」へ、再び通うことになった。


学校に初めて通う時は緊張した。

「また」あんな目に遭ったらどうしよう。

私をあんな目で見る人がいたら。

そう思うと足がすくんだ。

でも――すぐにそれが杞憂だと知った。

教室にいた私の級友たちは――私よりも一回りも二回りも小さな子どもたちだったからだ。

中には、私と同い年くらいの子どももいた。

最初は遠巻きに私を見ていたが、やがて小さな女の子が


――おねえちゃん、あそぼ?――


と、そでを引いてきたのをきっかけに、あっという間に小さな子どもたちに混じって遊ぶようになった。

男女の意識がまだない子どもたちに混じっていると、いつの間にか同性の子ども――男の子にも抵抗なく遊べるようになっていた。


不思議だ、と思った。

あれほど怖かったのに。

男たちから寄せられる、

私を舐め上げるような視線が。

私の顔を股間に押し付け、

恍惚とした表情を浮かべるあの顔が。

セレスさまに助けられた後でも、

ずっとこの恐怖はなくならなかったのに。

楽しそうなこの子たちの顔を見ると、まったくそんな恐怖など湧かない。

少しずつ、私の中の氷が解けていくのを感じた。



勉強は大変だった。

だが、本を与えられ、読めることに

そしてペンを与えられ、書けることに喜びを感じた。

読み書きに算術、そして礼儀作法までも

この学校で学んだ。

セレスさまは、やはり帰ってこなかった。

それでも、こうして学校に通い、

学び、そして子どもたちと遊ぶ時間が

とても大切だと感じるようになった。

小さな友人たちと戯れ、

本を読み、歌を唄い、詩を詠んだ。

女の子たちとは花を摘み

おしゃれの話をし、

そして――恋の話もした。

男の子たちとは一緒にかけっこした。


ある時、こんなことが起きた。

勢い余ってぶつかってきた同い年の男の子の手が、私の胸を掴んだのだ。

思わずビクッとなったが、その男の子は顔を真っ赤にして慌てふためいた。

その様子が可笑しく、つい笑ってしまった。


男の子は、純粋で可愛い。


顔を紅潮させて謝る男の子を見て、そう思った。


いろんな子どもたちと遊び、そして学ぶ。

その中で、学校に通えることの楽しさを知った。

学べることの嬉しさを。

知る喜びを。

私は、

私から奪われていた時間を

少しずつ取り戻した。



学校での生活も何年も過ぎた。

もう私は文字の読み書きも、計算も得意だった。

礼儀作法も身についた。

ティアノート家の使用人として

セレスさまのメイドとして

ちゃんとやっていけると思った。


でも。

城に帰ると、そこにはいつもの通り――

セレスさまの姿は、ない。

それでも、いつか帰ってくるその未来を夢見ていた。



それからだいぶ経って、戦争が終わったという知らせが聞こえてきた。


――やっと帰ってくる!――


気持ちが逸った。

セレスさまに会える。

そう思うと、居ても立っても居られなかった。


――セレスさま。

私、学校に行っています。

文字も、読めるようになりました。

裁縫も、お料理の基礎も、洗濯の仕方も

みんな学校で身につけました。

友だちも、できたんです。

セレスさまのメイドとして相応しいように

私、がんばったんです。

だから、セレスさま

早く、帰ってきて――


何度、夜空に向かって手を合わせて祈っただろうか。

セレスさまが残してくれた、このネックレスに手をやるたびに、

私がこうしているように、セレスさまも私を思い出してくれているだろうか。

この夜空に浮かぶ月を、セレスさまも見ているだろうか。

思いが募った。


でも。

どんなに待っても

何日待っても

何年待っても

セレスさまは、帰ってこなかった。



そんな時。

セレスさまの城に、使者がやってきた。

王宮からだった。


嫌な予感がした。

彼女の――使者の様子がやけに沈痛としていて、

それが余計に胸の鼓動を早めた。

使者が恭しく私に礼をし、私がユーリ本人かどうかを訊ねた。

恐る恐る頷く。


長い沈黙が流れた。



そして――

そっと差し出されたものを見て


私は目の前が真っ暗になった。


使者の手の中にあったのは

セレスさまの金色の髪束。


手の震えが、止まらない。

そんなはずはない。

何かの間違いだ。

そう願って、使者の――彼女の方を見た。


彼女は――

肩を震わせ、口を固く真一文字に結んでいた。


――!!


私は膝から崩れ落ちた。




――セレスさまは

もう、二度と、戻ってこない――



私の心を支えていたモノが

音を立てて崩れた。





窓の外の景色はもう秋の訪れを告げている。

深緑から徐々に紅葉へ移り変わる季節。

空を見上げると、見事な晴天だ。

この空を見ると、あの別れの朝を思い出す。

こんな晴天の中、私たちは涙を流しながら、

笑顔で別れた。

また、絶対に会えると信じて。


ふと強い風が吹き込み、再び長く伸びた髪がたなびく。

メイド服の裾を押えて窓を閉め、部屋の中に視線を戻す。

いつもセレスさまが座っていた大きな机。

調度品の数々。

ベッドに家具。

すべてがあの時のままだ。

そっと机を撫でる。

セレスさまが使っていた、紙やペンが、そのまま残されている。

よくこの机で仕事をされていた。

私の部屋からいつも見える、このセレスさまのお部屋。

セレスさまがいなくなってからも、ずっとこのお城の掃除は欠かしたことがない。

こうしてセレスさまのためにしているんだ、と思っていないと、

私の心が、持ちそうにないから。


ふと机に目を落とすと、黒い染みになっている個所がある。

紅茶をこぼした痕だ。

メイドとして働き始めたばかりのころは、本当に失敗ばっかりしてた。

書類の上に紅茶をこぼすことなんかしょっちゅうだったし、

淹れた紅茶が濃すぎてセレスさまが口に含んだとたん吹き出してしまって、

書類が台無しになったこともあったっけ。

あの時のセレスさまの顔は本当に可笑しかったな。


思い出し笑いをしていると、カサカサ、とポケットから乾いた音がする。

それを取り出し、ゆっくりと開くと、セレスさまの整った文字が現れる。

それは、セレスさまが残してくれた、私への手紙。

指でその字をなぞっていく。

もう、私は文字の読み書きができる。

それだけじゃない。

一般的な教養も身につけることができたし、

使用人としての基礎を徹底的に叩き込まれた。

友人も、できた。男の子を怖がることも、なくなった。

すべて、セレスさまのおかげだ。



なのに。

なぜ?

なぜあなたは、

一人で遠い所へ、行ってしまったの?

約束したのに。

帰ってくると。

また、会おうと。

そう、言ってくれたのに。



また、会いたかった。

セレスさまの温もりを、感じたかった。

あの声で、名を呼ばれたかった。

あの指で、長く伸びたこの髪を、梳いてほしかった。

もう一度、キスをしたかった。

ずっと、一緒に生きていたかった。

そして

ともに、老いていきたかった。


なのに。

どんなに恋い焦がれても

もう二度と、セレスさまに会えることは、ない。



セレスさまの部屋の換気をし、私は自分の部屋に戻った。

部屋には、たくさんの思い出を飾ってある。

セレスさまがくれた、いろんなもの。

そっと手を触れると、セレスさまの笑顔が、声が蘇った。


鏡の前に立つ。

ずっと成長した、今の私。

母によく似た、髪の長い少女の外見をした私。

かつては、父を、愛した。

母を愛する父の心を繋ぎ止めたくて

母の姿を私に重ねた。

私は、そこから動けなくなった。

でも、セレスさまが救ってくれた。

他の誰でもない、私を必要だと、

愛していると言ってくれた人。

愛しい、私のセレスさま。


目を閉じて、ネックレスに触れる。

今でも、昨日のことのように覚えている。

セレスさまが、このネックレスを下さった時のことを。

激しく愛し合った、最後の夜を。

愛の言葉を何度も交わした、あの夜を。


でも。

もう、どんなに望んでも

二度と、それは手に入らない。

私のセレスさまは、

永遠に、私の心の中だけにしか

いなくなってしまった。


「セレスさま……!」


声が、漏れた。

想いが、溢れだした。


「どうして!私を置いて、行ってしまったのですか?

もう一度、会えると、言ってくれたのに!

安心しろと、言っていたのに!」


どん、とこぶしを壁にぶつける。


「あなたを、待っていました!

ずっと、ずっと待っていました!

あなたからの手紙を見つけた時、本当に嬉しかった。

貴方が書いた文字に触れるたびに、貴方の声が聞こえる気がした。

だから、学校にもう一度通う気力がわいた。

貴方に、相応しい私になれる気がしたから!」


涙が、とめどなく溢れてくる。

こみ上げてくる、セレスさまへの愛。


「寂しかった!

あなたの声を聞きたかった!

あなたにもう一度抱きしめて欲しかった!

もう一度、あなたの口づけが欲しかった!

学校で頑張って、一人前になると、きっと胸を張ってあなたに会える。

そう信じて、寂しさを堪えた!でも!」


壁にもたれかかり、ずるずる…と崩れ落ちる。


「もう、あなたに二度と会えないなんて……

私には、これ以上……」









ふいに、ふわっと懐かしい香りに包まれる。

まるで、あの人がそばにいるみたいに。

そしてぎゅっと力強く抱きしめられる。

柔らかい、この感触。

まるで、あの人が抱きしめてくれているみたい。

そんなわけ、絶対にないのに。

もう、あの人はいないのに。


――ユーリ――


不意に、私を呼ぶ、あの人の声が聞こえた。


「ユーリ、ユーリ!」



顔を上げる。


視界に入る、金色の髪。

私を真っ直ぐ見つめる、青い瞳。

涙が、浮かんでいるように見える。


それは、

恋い焦がれた、

まさにあの人。


「ま―さか―」


もう、叶わないと思った。

もう二度と、会えることはないと諦めた。

ずっと、心の奥に、とどめておこうと決めた。

その人が、いま、

私の目の前にいてくれる。


「ユーリ」


セレスさまが、涙を堪えて私の名を呼ぶ。

凛とした、透き通るような美しい声。

この声に名を呼ばれるのが、好きだった。


「セレスさま……!」


そして。

いつも、そうしていたように。

私は、セレスさまの呼びかけに、答える。


涙で霞んで、よく見えないけれど。

その人が、いまここにいてくれて

私の名を呼んでくれている。

嘘じゃ、ないよね?

神様――


「ただいま」


涙を湛えた、満面の笑みで

セレスさまは言ってくれた。


「――おかえりなさい、セレスさま!!!」


久しぶりの口づけは

涙の味と

そして、幸せの味がした。





セレスさまが死を装ったのは、敵勢力の目を誤魔化す必要があり、事態が沈静化するまで王国へ帰還することができなかったからだ、と聞かされた。


「ユーリ、本当にすまない。

一度失う辛さを知っているのに。

このようなことをするしかないのは、本当に辛かった……」

「……セレスさま。

本当に、私、これ以上は生きていられない。

そう思っていました。

貴方のいないこの世界で生き続けるなんて、って」

「……ユーリ」

「いつかまた会えるって言ってくれたから。

だから、信じて待っていました。

学校でも頑張ったんです。

もう私、読み書きもできるんです。

計算だって得意です。

なんだってできるようになったんです。

それも、セレスさまにもう一度会えることを信じてたから」

「……済まない、本当に済まなかった」


首を振って、うなだれるセレスさまの頬を両手で包む。


「……いいえ、セレスさま。

セレスさまは、こうして帰ってきてくれました。

だから、これ以上の幸せは、ありません」

「ユーリ……ありがとう、そう言ってくれて。

私も、どれほどそなたに、私の無事を伝えたかったか……!」

「セレスさま……もう、会えないかと思った……!!」


口づけをもう一度かわし、

久しぶりにセレスさまと肌を重ねる。

今まで交わしたどんな愛よりも、

深く、

幸せだった。



ベッドの中で、私を後ろからセレスさまが抱きしめている。

背中にセレスさまの熱を感じながら、振り向いて私は告げる。


「セレスさま……」

「なんだ、ユーリ」

「セレスさまに会わなかったら、きっと私の『時』は止まったままでした。

私自身の中に閉じこもったまま、

前を向いて生きていくことなんて、できなかったと思います。

セレスさまが……私の『時』を動かしてくれたんです。

止まったままの、私の時を。『あの日』に」

「ユーリ……」

「私は……あの日、セレスさまの言葉に救われました。

父とのことも……否定せず、時間をかけて、

ゆっくりとセレスさまは理解してくださいました。

こんな私でも……

父と関係を持った私でも、

父を愛した私であっても、

まっすぐにあなたは私だけを見てくれました。

父との……歪んだ愛を追い求めていた私を、救ってくれたんです」

「……」

「それまで、ずっと私の心から消えなかった、父との愛に……

区切りをつけることができたんです。

父の最期の願いを……ようやく『あの日』、かなえてあげられました」


そう……父は、私を母の代わりにしたことを悔いた。

私を息子として見なかったことを。

私は今まで、父に私だけを見て、愛して欲しかった。

母ではなく、私自身を抱いてほしかった。

たとえ地獄へ落ちる呪われた道であろうとも、父となら堕ちていける。

そう思っていた。

でも、父の願いは、私が父を愛することではなかった

親子としての、元の関係に戻りたかったのだ。

それを……セレスさまが気づかせてくれた。


「父を……愛していました。誰よりも。

ずっと、一生ほかの誰かをこれほど恋い焦がれるなどあり得ない――

そう思って生きてきました。

でも……セレス様が変えてくださいました。

あなたと過ごす時が、どれほど幸せに満ちていたか……

この数年間、それを考えない日はありませんでした……!!」


そっと涙を拭いてくださるセレス様。その手を取り、私自身の頬によせる。


「あなたのいないこの世界で、

どんなにあなたを思ったことか。

あなたがいた名残に触れるたびに、

あなたの声を、

温もりを思い出しました。

もう一度、会いたい。

それだけを思っていました」


セレスさまの手を両手で握り、セレスさまを見上げる。

月明かりに照らされたセレスさま。

キラキラと煌めく金色の髪。

さっきまで愛し合っていたその名残か、

白い肌が上気している。


この言葉を、もう一度伝えたかった。

ずっと、ずっと。

もう二度と、言えないと思った、この言葉。

それを伝えようと、口づけをしてからセレスさまに言った。


「セレスさま……私は、あなたを愛しています。

ほかのどんな人よりも。

一生、あなたと一緒にいたいです」

「ユーリ……!!」


がばっと力強く抱きしめられる。

震える肩で、耳元でセレスさまが囁く。


「絶対に幸せにしてやる」

「……!はい……!!」

「愛している、ユーリ」

「私もです、セレスさま」


セレスさまに抱きしめられる。

セレスさまの、温もり。

ずっと、ずっと求めていたもの。


「もう、離しません」

「……私もだ!」

「きゃあっ」


ふいに、抱きしめられたままぐるぐると回される。

もつれるようにベッドに押し倒される。


「……もう、セレスさまったら!」

「くく……あはは」

「もう……しょうがないなぁ」


セレスさまの手が私の頬を撫でる。

心地いい。


「ユーリ」

「……はい、セレスさま」

「結婚式はどんなドレスがいい?」

「……それって、私のですか?」

「そなた以外に誰が着ると思ってるんだ?」

「セレスさまがいらっしゃいます」

「私はドレスなど着ない。性に合わん」

「……ぷ、……ふふふ……くくく……!」

「……そんなに笑わなくてもいいだろう」

「……だ、だって……」

「ふふ、まぁ私にドレスも似合わんが……二人でドレスを着るのもいいだろう」

「……!それがいいです!」

「じゃあ、決まりだな」



お父さん。

お母さん。

見ていますか?

私、幸せです。

セレスさまと、生きていきます。

苦しいときも

悲しいときも

嬉しいときも。

一緒に、歩んでいきます。

私は、忘れない。

あの日見た、未来を。

これから続いていく、未来を。

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