第3話 領主館での「仕事」

領主館に連れてこられた私は、手を拘束され、やがて大きな扉の前に立たされた。

徴収官が扉をノックし、中へ入る。何事かを話して、そして私は部屋の中へと引っ張られた。


部屋の中にいたのは、腹を贅肉で揺らしている、脂肪の塊のような男だった。

私が部屋に入るなり、私の顔をのぞき込んで、にたぁ……と満足げな笑みを浮かべる。


――あぁ、あの目だ――


私を「性処理道具」として見る「あの目」――級友たちが私を凌辱した廃屋の光景がよみがえる。

無理やり腔内を蹂躙する何人もの男根。私の身体中にかけられる、むせ返るような精臭とその苦味。

口を、胸を、下腹部をすべて犯されるあの感触。

何度果てさせても、決して終わらない悪夢。


私は自らを抱きかかえるようにして、その視線から逃れようとする。

しかし無理やり男の前に立たされると、男はぐいっと私を引き寄せ……おぞましい手つきで私の頬を撫で、手で髪を梳く。

父のものとはかけ離れたその感触。鳥肌が立った。私に触れないでほしかった。この身体は、父が愛してくれたモノだから。

歯を食いしばるように、その感触に耐える。救いを求めるように……震える手を髪飾りに伸ばす。すると思い出すのは――父の姿と声。そして――その指使い。

溢れそうな涙をぐっと唇を噛み、堪えていると男が言った。嘲笑いながら。

実の父親の身体はどうだったか、と。


――!!


ぎりっと男を睨む。この男は知っているのだ。私と、父とのことを。私が父と身体を、心を重ねていたことを。


悔しかった。父とのことを嘲笑されるのは、我慢ならなかった。父との思い出を、大切な思い出を、汚さないでほしい――!


睨み付ける私を見て、にやりと男が笑みを浮かべる。

そのまま男が合図をすると、徴収官は恭しく礼をし部屋を出ていく。するとすぐにガチャリ、とカギがかけられる音がする。

嫌な予感がした。私を見てニヤリと笑いながら、その男は私を無理やり裸にし、浴場へと連れていかれ――そして、犯された。


男の舌が私の胸の突起を這い、指が下腹部をなぞり、菊門に指をねじ込まれる。散々身体を犯され、男が己の肉棒を挿入し、腸内にぶちまけられた精液の感覚。一方的な、性欲の処理だけを目的に身体を弄ばれるこの感覚。廃屋の光景が、蘇ってくる。

萎えた男根を口に押し込まれ、頭を強く押さえられる。口の中に広がる精臭とその苦味にむせ返りそうになる。何度もえずいては涙がにじみ出た。


やがて男は、ようやく私の口からソレを引き抜いた。顔じゅう、身体中にまき散らされたこの男の精液。一刻も早く落としたかった。しかし男は-冷徹に私を見てこう言った。


――身体についた精液を指で掬い取りすべて目の前で飲み干せ、と――


屈辱を感じながらも、私は自分の手で精液を掬い……男の方を見ながら、精液を飲み込んだ。

それを見て満足した男は、私の身体中を舐めまわすように見つめ……そして、『ある部分』に視線を落とすと――ニタニタと笑みを浮かべ、こう言い放って出ていった。


――父親のモノを思い出したか?この変態が――


1人残された私は……口の中に残る臭いと苦みよりも何よりも……あそこまで一方的に犯されてもなお、『私自身』が大きく屹立し、先走りを垂れ流していた事実に、絶望を感じていた。

どんなに嫌がっても、反応してしまうこの身体――あの男の笑みが、私の身体の奥の熱を見透かしているかのようだった。


父以外とは二度とこんなことをしたくなかったのに――!


あざ笑うかのような、男のあの視線。それが、私の心を粉々に折ろうとしていた。

悔しくて、ただただ泣き続けた。



それから私には、狭いものであったが部屋も与えられ、食事も、服も与えられた。しかし――この男が求めるまま、どんなことでもしなければならなかった。どんな場所でも、男が命じるままの格好で、命じられるとおりにこの男を満足させなければならなかった。髪を伸ばし、口紅をひくように言われ-そして裸同然の衣服のまま、たとえ他人の目の前であろうとも、肉棒を咥えさせられた。男は…私を部下に見せつけるように、毎日私をなぶった。

少しでも嫌がるそぶりを見せると、容赦なく殴られ、蹴られ、鞭でぶたれた。徹底的に従順になるまで、食事も水も抜かれた。次第に、男に抵抗する意思を、削がれていった。


最初は抵抗していた。こんなところから抜け出したかった。貧乏だったが、母と-そして父と共に過ごしたあの家に帰りたかった。

だが、あの男にがんじがらめにされ、逃げる意欲も削がれ、私にはもう、ここでただ耐えていく他に道はなかった。こんな生活と比べたら、たとえどんなに貧しくても、母と、父と暮らしていたあの生活ほど、満たされたものはない。そう思うと、ものすごく孤独だった。

孤独に耐えきれないと感じたときは、いつもこの髪飾りが私を支えてくれた。人を人とも思わぬ仕打ちを受けようとも-この髪飾りがある限り、父との日々を胸に、生きられる気がした。ぎゅっと髪飾りを握りしめ、いつも眠りについた。



そんなことが繰り返されるうち、私の心はだんだんと荒んでいった。私に求められるのは、ただ性欲を満たすための人形。そう、私はただの道具。肉棒を挿入し、精を吐き出すためだけの肉壺。

私は、暗い、暗い闇の中へ次第に感情を閉じ込めていった。何も考えず、ただ、淡々とこなす。

私は、次第に感情を失くしていった。どんなに嫌なことがあっても、何も考えていなければ楽なんじゃないか。

そう思って、私は、身体を弄ばれるたびに、熱く反応するのを自覚しながらも、何も考えなくなっていった。舌を出し、目の前にある屹立を舐め上げた。飲み干せと言われれば、喉を鳴らして飲み込み、にっこりとほほ笑んでやった。後ろの穴をつかれるたびに、奥で感じるようになっても、ただ、淡々と凌辱され続けた。

父との思い出だけが、私の安らぎだった。



私は男の言われるまま、要求されるままに、ありとあらゆる快楽をこの身体を使って男に与え-同時に、私の身体も、男によって開発されていった。

髪を伸ばし、肌も入念に手入れするよう命じられた私は――どこから見ても、母の若かりし姿そのものだった。

鏡を見ると、そこに写る私は母そのもの。私を通して母の幻影を見ていた父が、もし生きていて今の私を見たらどう思うのか――私を、見てくれるだろうか。胸が、張り裂けそうだった。


やがて、賓客を集めたパーティでも「仕事」をするようになった。私は――胸の突起も、私自身の男根も透けて見えるほど薄いドレスをまとい、踊るように言われた――目いっぱい、いやらしく。

男に言われるままに――身体を来客に摺り寄せ、股を開きながら踊った。

来客たちが驚き――しかし、その眼は私の身体にくぎ付けとなり、股間を大きく膨らませていた。

男が再び私に近づき、こう言った。来客に『奉仕』するように、と。

……跪き、大きく膨らませたソレを口に含む。丹念に舐め上げ、指でしごき……ほとばしる精を、一人一人飲み干した。

そのあとは――まるで、アリの群れに砂糖のカケラを落としたように――我先にと私の身体に、菊門に舌を這わせ、昂ぶった剛直を挿入してきた。

ニタニタと笑いながら、男は私が他の男たちに囲まれ、犯されているすがたをじっと見ていた。

私の身体中に精を放ち、ようやく満足して館をあとにする男の客人たち。

――ぜひ、また呼んでいただきたい――

誰もが、私の方を振り返り、ぎらついた目を向けてそう言っていた。

ほくそ笑む、男の顔が映る。


私は――男娼だった。

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