稔の"とある思い出~不思議編~"

沓木 稔

その1 夢?

活字を読む事が苦手な俺は小説なんてほぼ読まない。

飽き性な性格も相まって最後まで読み切った小説は片手で数えるほどだと思う。


額に稲妻のマークがある某魔法使いの男の子が主人公の小説は1巻と3巻だけ読み切れたと記憶している。


全巻読むほどの熱量は無かった訳だが、人生においてあの分厚い本を1冊読み切れるだけでも凄いと思うのは俺だけだろうか。


この飽き性に最後まで読ませる力。想像力を掻き立てる面白い小説だと思った。

…なんて上から目線で話すが有名だから面白くない訳ないよな。大変、失礼致しました。


まぁ、映画が面白かったから"小説も読んでみっか"と思いつきで読んだだけなんだけど…。後は日本の作家さんで~…いや、そんな話がしたかった訳じゃない。



苦手意識がある小説に対して"読む楽しさ"と"書く楽しさ"は別だよなと気付いてから"何か書いてみたいかも"ってなった訳だ。



お察しの通り、小説と言う物に無縁な生活をしている。ので、文章がおかしいのは御愛嬌という事で許して欲しい。



書いてみたいネタはあれど、何を伝えたいのか考えると"そこまで伝えたい内容無いな"とか"恥ずかしいな"が勝ってしまって、何も書けずにいる。



そこで、俺は考えた。



俺が経験した事を書けばいいじゃないか!と。



不思議な経験・体験話というのは一般的思考で言えば"そんなの嘘だ!フィクションだ!"と言われるだろう。


「でも、本当だもん!!」って言いたくなるけど大人だからね。

甘んじて受け入れよう。


おまえが嘘だと思うなら、おまえの中ではそうなんだろうな。って思うけどね!!

…うむ。まったく大人じゃなかったな。失礼しました。



冗談はさておき、この小説?この話?が誰かの目に留まればいいなという希望を胸に書いてみる。


もし、読んで頂けたのなら嬉しい限りだ。

読まれないなら読まれないでもいいんだけど。


…自分の為に残しておきたかった話だから。


では、ここから。俺の体験した不思議な話。

オチは無い。現実なんてそんなもんだよね!



・・・



中学生の頃の話だ。学年は覚えてない。1年か2年生くらいかな?

もう20年くらい前だから…老いって怖い。



あの時は体調がすこぶる悪かったようで、保健室にいた。ここまでは記憶が曖昧。どうやって保健室に来たか覚えていない。



(今では立派な片頭痛持ちなのだが、当時から片頭痛のような症状があったと思う。

多分そのせいで保健室に行ったんじゃないかなーと推察する。)



「熱は無いね。吐き気は無い?とりあえず体温計ろう。ベッドに横になってて。」


「はい。」



保健室の先生に促されてベッドへ続くカーテンを開けてもらう。


窓際のベッド。ベッドに横たわると窓に掛かるカーテンの隙間から綺麗な青空が見えたのが印象的だった。


保健室には怪我で入室するくらいしかなかったので"ベッドで横になる"という行為に少しだけ憧れていた部分があった。


ベッドに横になる=病弱な生徒=か弱い というイメージだったので、

"か弱い病弱な自分"を想像して少し笑った。


初めての白いベッドは固くて驚いた。シーツがパリッとしてたのも相まって寝心地悪いと思った。


仰向けになると白いトラバーチン模様の天井が見える。



この天井の柄が俺ん家の姉ちゃんの部屋の天井の柄と同じだと気付いて少しだけ緊張が和らいだ記憶がある。



どのくらい時間が経っただろう。多分20分も経っていない。


ここで思った事があった"横になる"って何するの?である。



学校では授業中寝てはいけないのでベッドで寝るのもダメだと思っていたのだ。


先生も"横になって"とは言っていたが"寝ていい"とは言っていない。



俺が出来る事と言えば静かに天井の穴の数を数える事か隙間から見える空を見て飛行機飛んでこないかなーと目線を動かす事だけだった。


そんな暇な時間を過ごしていると授業終わりのチャイムが鳴り休み時間になる。



「稔ー?まだ体調悪そうだね、次の授業も休んだほうがいいかな。次、国語だっけ?もう少ししたら先生に言いに行くね。」


「はーい。」


そんなに体調悪そうに見えたのかな?自分では分からないけど、見るからに具合悪そうだったんだろうなぁ。


先生は心配そうな顔をしていた。保健室の先生って優しいのは全国共通なのだろうか。


カーテンを閉めると先生は少し書き物をしているようだった。



「〇月〇日 何年何組の生徒〇〇さん 体調不良 〇時~」とカルテのようなものを書いていたのを目にしたことがあったので、


それを書いてるのかなと思っているとドアが開く音が聞こえた。



「…佐藤です。体調が悪いので休みたいです。」



「あれ?昨日も休んで無かった?…んー。じゃあ横になる?そっちは稔が寝てるから左側の方使ってね。」



「…はい。」



入室した生徒は俺の知ってるやつだった。クラスは違うが同級生だ。

あまり好きな奴ではなかった。


「おまえも休むのかよ。ずる休みじゃねーのか?」と言いたい所だったが、

俺に優しかった先生が奴に少し冷たい態度だった事に少し気分が良くなったので気にしない事にした。


そうこうしているうちに休み時間が終わるチャイムが鳴った。


先生は書き物が終わったようで、「職員室行ってくるからねー」と俺たちに声を掛けドアを開閉する。


ドアが閉まると"カタン"と音が鳴り、スタスタと足音が遠ざかる音が聞こえた。



カタンという音は"保健室の先生は職員室にいます。御用の生徒は職員室まで"という立札が掛けられた音なはず。



先生が当分来ない=こっそり寝られるのでは?という発想に至り少し目を閉じてみる。



どのくらい時間が経ったのだろう。保健室の先生はまだこない。すぐ戻ると言ってたのに。



本当に寝てしまうぞ?いいのか?寝ちゃうぞ?と、意識が遠のく感覚に陥る。


寝ちゃっていいのか?寝ちゃうぞ?寝ちゃうぞ?昼間に学校で寝てしまうという背徳感のような物が俺をワクワクさせた。



…マジで先生こない。少しだけ寝てもいいか。そう思っていると



"シャー"っと頭上でカーテンが開く音が聞こえた。



は?なんだ?佐藤、おまえ、俺がいるベッドのカーテン開けたのか?


何かようでもあるのか?こっちはさぼりじゃないんだ。体調が悪いんだよ。


…まぁ、いい。目閉じてるし知らないフリ、寝たフリだ。



"シャー!"…は?カーテン閉めた?



なんなんだよ。眠いのに。体も重いし。こっちはおまえと違って体調悪いから休んでるんだぞ。



"シャー!!" 鬱陶しいな!開けるなよ!構ってちゃんかよ!!!



文句を一言言ってやろうと目を開ける。




…トラバーチン模様の白い天井が見えるはずだった。




目の前には薄茶色の…木目…。なんつーか、古風というか和風というか…。



体が動かせず、目だけゆっくりと少しだけ動かせる。



仰向けになっている状態のようで、視線を下に動かすと胸元に白いものが微かに見えたので、"保健室のベッドと同じく白い布団に寝かされてるんだなぁ"と妙に納得した事を覚えている。



(不思議と保健室じゃない場所に居る事に驚きはしなかったよ。)



広めの和室。薄っすら見える障子は日の光を反射してるのか霞んで見えた。



"…和室?…あれ?体動かないな。"



夢にしてはリアルで、部屋は暖かいのに自分はひんやりしてるような感覚だった。



「…かなえさん?…かなえ!!?」



近くで女性がこっちに向かって呼びかける声が聞こえる。



女性の姿を見る事が出来なかったので、視界範囲外の頭上に居るのかなぁという感覚だった。



"…え?俺の事?違いますよ?…俺は稔です。"



そう言いたいのに声が出ない。勘違いされてるようだ。

教えてあげたいのに。体も口も動かない。



「かなえ!!!かなえさん!!!」



あぁ、なんて悲痛な声だろう。無意識にごめんなさいと謝った。



「かなえさん!!!…!!! !!!!」



声が出ない。体が重い。開けていた目も閉じかかっている。視界が霞む。



悲痛な叫びで名前を呼ぶ女性の声も遠のいていく。



…ごめんなさい。…私はかなえじゃない。

違うよ。私は 私の名前は…稔。ごめんなさい。



完全に視界が白んで天井が見えなくなった。



真っ白だなーと思っていると




"シャー!!"



あぁ、またカーテンの開閉音。



"シャー!"



意識が覚醒する感覚。この血液が体中を巡る感覚は何なんだろう。



"シャー(シャー)"



目を開ける。トラバーチン模様の白い天井。…保健室だ。



ハッとして飛び起き自分の所のカーテンを開けると隣りのベッドにいた佐藤が内履きを履いてる最中だった。


しばらく目が合う。…なんで俺たち見つめ合ってんだ?


そう思い目を反らすと自分も内履きを履くことにした。

少し寝たからか体の重さもなく普段と変わらない体調に戻っているようだった。


内履きを履きながら先ほどの事を考える。



一番最初に聞こえたカーテンの開閉音。


あれが"開く、閉まる、開く"なら


和室から意識が遠のいた後に聞こえたカーテンの開閉音は


"閉まる、開く、閉まる"だったのだろうと無意識に思った。


マジでさっきのなんだったんだ?


「稔、そっちのクラス、次の授業何?」


「…美術だったと思う。」


突然、佐藤に話しかけられて思考が止まる。


…あぁ、そうだ。次の授業は大好きな先生の授業だった。


俺はそのまま佐藤を置いて保健室を出て教室へ向かった。


(職員室寄って保健室の先生に次の授業出ますって言うべきだったんだろうけど、

少し混乱してたんだろうな。何も言わず保健室抜けたから、後から怒られた。)



数週間経ってからまた保健室へ行く機会があった。


普段なら保健室なんて行かないくらいの体調だったが、もう一度会えるなら謝りたくて、保健室へ行った。



同じような時間帯で、同じような天気だった。


同じように保健室の先生が離席する。


同じように眠気がきたので目を閉じる。



誰も居ない部屋でカーテンの開閉音は2回だけ聞こえた気がする。


…開いて、閉じて。



3回目は聞こえなかった。閉まったまま。




きっともう会う事はないんだろうなと思った。




・・・



そんな事がありました。



今思うと恐ろしいことしてんなぁって思うけど、当時は好奇心旺盛で無鉄砲だったからな。怖いもの知らず。


素直な気持ちで「会って謝らなきゃ!」って思ってるからな。

どういう思考回路してんだよって思うね。




誰か、こういう経験した人が居たりする?


カーテンの開閉音で別世界行っちゃったー!って人居たら夢じゃないよなーって思ったんだけど。


でも、それは夢だよ。って方が都合いいのか。

…うん。体調悪いと悪夢見るからそれだろうね。そう思うことにした。



20年経っても忘れられない悪夢というのもなかなかでしょ。



ってなわけで、稔の不思議な思い出 その1でした~。


タイトル付けるとしたら『夢?』ってなるのかな。そうしよう。



夢繋がりなら、その2もある。それはすげぇ夢って感じだった。小説として書くなら練習になりそうなりそうな夢の話だと思う。



不思議な思い出その3は"俺の守護霊?ちょんまげついてるんじゃねーかな"の話



とか書けたらいいな。



絶賛、片頭痛と戦う社畜生活を謳歌してるから時間はかかりそうだけどね!!!



以上、解散!!!

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