第124話

そして久しぶりの繁華街に着いたはいいものの…。入口付近の隅っこで、思わず立ち止まってしまった。…人が、多すぎる。やっぱり休日だからだろうか。




はぁ…、と深い溜息が口から零れる。よりにもよって何で今日お兄ちゃんは私に買い物なんか頼んだりするの…、と心の中でお兄ちゃんに八つ当たりする。




でもいつまでもここで立ち止まってる訳にはいかない。覚悟を決めて、ようやく繁華街の中へと足を踏み入れた。




ざわざわ、がやがや。繁華街の中は、これでもかと言うほど人が溢れ返っていて騒がしい。地味な格好をしている私は、明らかに場違いだと思う。その証拠に、すれ違う人達はじろじろと容赦ない視線を浴びせてくる。




色々な人達からの、特に男の人からの視線が怖くて、逃げるように俯きながら、早足で中心部にあるスーパーに向かった。




そして数分。やっとスーパーに着いた。人が多すぎてなかなか思うように前に進めず、予定より少し遅くなってしまった。スマホの時計を確認すれば、既に18時前。早くしないと、帰りが”危ない”。




急いでスーパーに入り、適当に頭の中で何の料理を作るか考えながら、手際よく食材をカゴに入れていく。




こんなもんでいいかな。あんまり買い過ぎると帰りが大変になるし。




ある程度カゴに入れ終わり、レジへと持って行く。少し混んでたけど、ベテランのおばさんだった為にすぐに順番が来て、思っていたよりも早く会計を終わらせることが出来た。




素早くかつ丁寧に袋に詰め、スーパーを出る前にもう一度気合いを入れ直し、再び繁華街に出た。




さっきよりも人が増えたような気がするけど、そんなのを気にしてる余裕はない。一刻も早く、繁華街から出ないと。





”夜の繁華街は危険”





いつもお兄ちゃんや真於くんに言われてること。




それなのに、何でお兄ちゃんは私に買い物を頼んだのだろう。病院からの帰り道で一番近いスーパーは繁華街の中心部にあるのに。それをお兄ちゃんも知ってるはず。…もう、何かあったら、お兄ちゃんを一生恨んでやる。

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