第122話

『あの、ね、』




まだ自分の中で整理出来てない気持ちを、言葉に詰まりながらも話した。




何で牧谷さんは大丈夫だったのか。何で、安心…、したのか。その、今までとはどこか違う感情に、戸惑っているということ。全て、包み隠さず吐き出した。




そして、話し終えてもずっと黙ってるかおちゃんを不思議に思って少し俯いていた顔を上げれば、





『…かおちゃん、何でそんなに嬉しそうなの…?』





嬉しそうににまにまする、物凄い笑顔のかおちゃんがいた。





「いやー、だって…、ねぇ?やっとココちゃんに”春”が来たんだもん。嬉しいに決まってるじゃない!」




『は、春…?どういう意味?』





「んもう、それはココちゃん自身が自分で気付かないと、ね?」





口に人差し指を当てて色っぽく微笑むかおちゃん。色気に当てられて、女の私でも少し顔が熱くなったのが分かった。…もう、姉弟揃って心臓に悪すぎる。





『自分で気付くって…、何を、』





答えを見つけたくて吐き出したのに、ますます訳が分からなくなってしまった。





「詳しいことは私からは言えないけど、その”変化”はココちゃんにとっては凄くいいことなのよ?」




『いいこと?』




「そう。やっと、前に進めてるってことなの。」




『前に、進めてる…。』






噛み締めるようにその言葉を口に出す。





牧谷さんに対してのこの感情が、どうして前に進めてるって言えるのかは分からないけれど、かおちゃんがそう言うならそうなのだろう。





「ふふ、本当に嬉しいわ。…真於には悪いけどね。」




『え?』




「いえ、何でもないわ。」







かおちゃんが最後に何かを呟いたような気がしたけど、気のせいだったのかな。

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