第120話
ぎゅうぎゅうと締め付けてくるかおちゃんに、「かおちゃん、苦し…、」と呟けば、ようやく離してくれた。
「ごめんなさいね、あまりにも可愛らしいから衝動が抑えられなくて…、って、話が逸れちゃったわね。」
「聞きたいことがあったのに、」と続けてそう言うかおちゃんに、何だろう、と首を傾げる。
「その助けてくれた男の子のことよ。」
『…牧谷さん?』
ぽつり、無意識に牧谷さんの名前を呟いた私に、驚いたように目を見開いたかおちゃん。
「あら、ココちゃんから男の子の名前が出てくるなんて珍しい。これで2人目よね?1人目は確か、”リツくん”、だったかしら?」
『そう、だね。』
どこか嬉しそうに話すかおちゃんに、そう、一言だけ返した。
お兄ちゃんや真於くんには言ってないけど、かおちゃんだけにはリツくんのことをよく話していた。
その時のかおちゃんの酷く嬉しそうな顔はよく覚えている。
「でもそのリツくん、急に来なくなっちゃったんだっけ?」
『…うん。』
そう。リツくんは、突然屋上に来なくなってしまった。
―――「明日、お前に言いてぇことがあるから、いつもの時間に屋上で待ってる。」
リツくんと最後に会った日。真剣な顔で言われた言葉。
…私はずっと、待ってたのに。
”あの時”。あなたは私に、何を伝えたかったの…?
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