第119話
「いつも通り、いくつか質問していくわね。まず、最近症状の方はどう?落ち着いてる?」
書類を片手にそう聞いてくるかおちゃんに、少し言葉が詰まる。
『あ…、落ち着いてたんだけど、つい昨日、久しぶりに発作が起こっちゃって…。』
「昨日?どうして?」
『…男の人、に…、肩を触られて。』
少し顔が険しくなるかおちゃんに、声が小さくなる。
「何で急にそんな展開になったのよ。もちろん、そんな状況になった原因あるんでしょ?」
『え、えっと…、』
女の人達に囲まれて、その時助けてくれた男の人に触られて発作が起きました、なんて。かおちゃんの反応が怖すぎて言いづらい。
「…心音、言いなさい。」
少しトーンの下がった声色でそう催促してくるかおちゃん。…こんな時だけちゃんと名前で呼ぶなんでずるい。
そんなかおちゃんに観念して、そうなった経緯を正直に詳しく話せば案の定。
「私の可愛い心音を囲んだ挙句に、殴ろうとしたですって?…その女共、探しだして半殺しにしてやろうかしら。」
眉間に皺を寄せて恐ろしい言葉を口にするもんだから、
『…かおちゃん、昔に戻ってるよ。』
思わずそう突っ込んだ。
「あら、私ったら。ふふ、冗談よ冗談。」
その私の言葉に、すぐにいつもの調子に戻ったかおちゃん。でも、絶対冗談じゃなかったよあれ。目が本気だったもん。
「ココちゃんのことになるとつい”現役”の時に戻っちゃうわね。気を付けないと。」
そう言うかおちゃんは、実は昔レディースの総長をしていたらしい。
私と出会った時にはもう既に辞めていたみたいだったけど、なかなか昔の癖が抜けなくて、怒った時とかに時々こうして口調や表情が昔に戻ると言っていた。
『私の為に、怒ってくれたんでしょ?…ありがとう、かおちゃん。』
「んもう!ほんと可愛いわね!」
そう言いながら抱き着いてくるかおちゃんに、ふと依里ちゃんの姿が重なり、そういえば依里ちゃんもよく抱き着いてくるなぁ、と思いながら受け止める。
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