第110話
「心音…な。」
どこか噛み締めながら、小さく私の名前を呟く彼を不思議に思ったけど、
『あなたの名前は?』
聞かれたから、私も聞いた方がいいよね、と思って聞き返す。
「俺は”リツキ”だ。好きに呼べ。」
そうすれば、若干上から目線でそう返ってきた。
リツキ…。好きに呼べって言われたから、適当でいいよね。
『リツくん…でいい?』
名前を省略してそう呼べば、少し口角を上げて満足そうな顔で「あぁ。」と言われて、思わずドキッとした。
…真於くんもそうだけど、顔が整ってる人の不意打ちの笑った顔って、何でこんなにも心臓に悪いんだろう。
リツくんは、目付きが悪すぎるくせに笑った顔は幼くて、ちょっとだけ可愛いと思ってしまった。そんなことを言ったらまた睨まれるのがオチだから、絶対口には出さないけれど。
って、まずい。結構時間が経っちゃった…、お兄ちゃんまだ来てないよね?急がなきゃ。
『じゃあ、ほんとにもう行くね。またね、リツ…くん。』
何だか、声に出して名前を言うのが恥ずかしくて名前の部分だけ声が小さくなってしまった。
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