第108話

「とりあえず、いい加減中入るぞ。」






そう言った彼と共に、昨日ぶりの屋上に足を踏み入れた。





私は昨日と同じ場所に腰を下ろしたけど、昨日と同じじゃないのは、彼が人1人分のスペースを空けて私の隣に座ったこと。






何を話すでもなく、ただじっと黙ったまま前に視線を向けている彼に、「あの…、」と私の方から話しかけた。






「どうした?」





『さっき、何で私がドアの前にいるって分かったんですか?』






ドアは閉まってたのに、どうして分かったんだろう。






「あぁ…。誰かが近付いてくる気配がしたんだよ。ここの屋上に来る奴は滅多にいねぇから、多分お前だと予想しただけだ。」






『そうだったんですか…。』






至極当たり前みたいに言ってるけど、それだけで分かるって、相当凄いことだと思うけどな…。






そんなことを思っていれば、今度は彼から、






「つか、敬語いらねぇよ。歳近いだろ?」






そう、言われた。






『え、でも年上…ですよね?』





幼い顔立ちだけど、私よりは年上な気がする。





「俺、中3だけど。お前は?」





…え、高校生ぐらいかと思ってたのに。1つしか変わらないんだ。





『私は、中2です。』





「ほら、全然歳変わんねぇじゃん。タメで話せよ。敬語は気持ち悪ぃからやめろ。」






不快そうな顔をしながらそう言う彼に、






『わ、分かり…、分かった…!』






敬語になりかけた時に鋭く睨まれて、それが怖くて慌ててタメ口に直して何とか答えた。

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