第105話

いつの間にか震えは止まっていて、思わずチラ、と彼を見る。






どこかぼーっとしていたけど、ふとこっちに視線を移したから、バチッと目が合ってしまった。





あ、えっと…、と逸らすタイミングを逃してそのまま見つめていれば、






「…お前、こんなとこで何してたんだ?」






唐突に、そんな言葉を投げかけてきた。






一瞬、言葉に詰まる。…だって、飛び降りてしまおうかと思ってここに来ました、なんて、初対面の人に言えるはずがない。






『そ、外の空気が…吸いたくて。』






半分嘘で半分本当のことを、俯きながら答える。外の空気が吸いたかったのも、別に嘘ではないから。






私の返答に、「そうか。」と一言呟いてそのまままた黙り込んでしまった。






しばらく沈黙が続いたけど、私も、






『あなたは…、どうしてここに来たの?』






そのことが気になってしまって、思わず聞いてしまった。

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