第97話
「真於くん?」
ココに名前を呼ばれて、はっと我に返る。
気が付けばもう既にココの家に着いていて、心配そうな顔が俺の方を覗き込んでいた。
「大丈夫?ずっとぼーっとしてたけど…。」
『あぁ…、悪ぃ。最近疲れてんだよ。』
適当に誤魔化してそう言えば、すぐに「そうなんだ…。」と納得して疑ってくる様子はない。
「あんまり、仕事し過ぎちゃダメだよ?ちゃんと休んでね!」
メガネと前髪であんまり表情は見えないが、一瞬見えたココの笑顔に、柄にもなく照れて赤くなっているであろう顔を素早く手で隠した。
くそ…、不意打ちでやられた。
「真於くん?どうしたの?」
不思議そうな顔でそう聞いてくるココに、
『何でもねぇ。ほら、早く帰って休め。』
顔を見られないように片手で隠しながら、もう片方の手でしっと払う仕草をする。
「もう…、心配したのに。」
拗ねたような声でそう呟きながらも、荷物を持って車を降りていくココ。
「じゃあ、送ってくれてありがとう真於くん。またね。」
家の鍵を開けながら俺の方に振り返ってそう言うココに、「あぁ、じゃあな。」と言えば、小さく手を振りながら家の中へと消えていった。
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