第96話

真於side








「ごめんね、真於くん。遅くなっちゃった。」






申し訳なさそうに眉を下げながら、裏門で待っていた俺の車に乗り込んで来るココ。






『全然待ってねぇよ。』






そう言いながら、いつもの癖になっているココの頭をくしゃりと撫でれば、嬉しそうに口元を緩めるのが見えた。





それに何とも言えない感情が湧き上がってくるが、平静を装って「行くか。」と声を掛けて車を発進させる。





チラ、と横目でココを見れば、相変わらず顔が隠れている地味な格好。





まぁその格好をしてる理由は分かってるから、何も言うつもりはねぇが。





だが、ココに深い心の傷を負わせた元凶の”アイツ”の顔を思い出して、殺してやりたいという激しい衝動に駆られる。





”あの時”。あと一歩のところで上手く逃げられ、どこに隠れてやがるのか未だに見つかっていない男。













――――「い…やっ…、こ…来ないで…っ…!」











俺に向けられた、怯えた表情と拒絶の言葉。






…もう、あんなココは見たくねぇ。







見つけたら、絶対ぇに殺してやる。

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