第91話
前は廊下に男の子達がいっぱいいたけど、今日は何故か誰もいなくて不思議に思ったけど、特に気にせず真於くんの隣を歩く。
そしてそのまま旧校舎を出た時、
「なぁ、ココ。」
さっきまでずっと黙ってた真於くんが、唐突に口を開いた。
『どうしたの?』
隣にいる真於くんを見上げるけど、前を向いたままで目が合うことはなかった。
「…さっき、冬悟に抱き締められてたろ?」
…やっぱり、聞かれると思ってた。
『そう、だね。』
一言そう返せば、
「アイツは、大丈夫なのか?」
どこか複雑そうな声色でそんな言葉が返ってくる。
”大丈夫なのか”っていう言葉の意味は、”男性恐怖症なのに牧谷さんは大丈夫なのか”、ということだろう。
それは、自分でも思ってた。
最初肩を触られた時は発作が起こったのに、どうしてさっき抱き締められた時には逆に震えが治まって安心感さえ感じてしまったんだろう、と。
真於くんやお兄ちゃんでさえ、慣れるのに1年はかかったというのに。
”どうして”。そんな疑問が、頭の中をぐるぐると意味もなくただ駆け巡るだけで、一向に答えは出てこない。
『…分からない、の。』
どうしてなのか、自分でも分からない。
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