第90話

そんな真於くんを見ていた牧谷さんは、何故かびっくりしたような顔をしていた。






確かに、真於くんの笑った顔は貴重かもしれない。いつも無表情で、笑うのなんて滅多にない。らしい。前にお兄ちゃんに聞いたことがある。






でも、私にはよく笑ってくれるからいつも優越感に浸っていた。







『それは分かってるんだけど…、お兄ちゃんの話長いんだもん。』







拗ねたような声を出して見上げれば、物凄く優しい顔をした真於くんと目が合って、咄嗟に逸らした。






真於くん、無駄に顔が整ってるから心臓に悪い…。







「んじゃ冬悟、”色々”ありがとな。ココ、帰るぞ。」






牧谷さんにそう言って、軽く手を上げながら部屋を出て行く真於くんに、色々?と思いながらも私も慌てて付いて行く。






『ありがとうございました。』






そして部屋を出る前に、牧谷さんに小さく頭を下げてお礼を言えば、






「あぁ。…またな。」






『え?あ、はい…?』







またな、の意味が分からなかったけど、それ以上は深く考えないようにしようと思って、とりあえず返事だけ返した。






部屋を出たら、見覚えのある3人の男の人達がいたけど、真於くんがいる安心感からか身体が震えることはなくて安堵の溜息を吐く。






その3人の男の人達とも何か話していた真於くんだったけどすぐに終わったらしく、「じゃあな。」と声を掛けていた。






部屋を出て行く真於くんに続いて、一応ペコっと頭を下げてから私も部屋を出る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る