第89話
この声。
『真於…くん?』
ドア側に背中を向けている状態だから真於くんの姿は見えないけど、声でそうだと分かる。
私が真於くんの名前をぽつり呟けば、ようやく腕の力が弱まったから、すかさず身体を両手で押せば簡単に離れてくれた。
ふぅ…と小さく息を吐いて真於くんの方に振り返れば、信じられないというような顔をしながら目を見開いて固まっていた。
『真於くん?』
もう一度名前を呼べば、はっと我に返った様子。
「ココ、大丈夫か?倒れたって聞いたから心配してたんだぞ。大和も心配してた。」
床に座り込んだままの私を引っ張り上げてくれた真於くんは、そのまま優しく頭を撫でてくれる。
牧谷さんは、真於くんが近付いて来る前にサッと立ち上がって後ろの方へと移動していた。
それにしても、お兄ちゃんに連絡したんだ…。家に帰ったら絶対何があったか問い詰められるなぁ、と憂鬱になる。
そんな私の表情を見て察した真於くんは、
「そんな顔してやるな。大和はお前が心配なだけなんだからよ。」
ふっと笑いながら頭をポンポンと数回叩いてきた。
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