第56話
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「でもよー…、ぶっちゃけ地味すぎじゃね?ほんとに大和さんの妹なのか?あの子。」
まだあの子の”素顔”を知らない聖が、そんな言葉を口に出す。
まぁ、聖がそう言うのもおかしくはない。素顔を知っている俺ですら、最初にあの容姿を見た時の第一印象は、”地味”だった。
制服のボタンはきっちり全部留め、スカートは長く膝下。おまけに目元が隠れるぐらい長く伸びた前髪で肩ぐらいの長さの髪は真っ黒、そして黒縁メガネを掛けていた。
…全く、上手く隠れたもんだ。
やっと、大和さんの「簡単には見つからない。」という言葉の意味を理解した。
あれは、もし廊下ですれ違ったとしても気付きようがねぇ。
「ほんとに、いくら大和さんの妹だからってあんな地味な女の子を必死に探して…。俺らの中でも特に重度の女嫌いだったはずなのに、一体どういうつもり?」
そう言いながら、何かを探るような目つきで俺を見てくる快里。
『…さぁな。お前らには関係ねぇ。』
これ以上詮索するな、という意味も込めてそう吐き捨てる。
そんな俺に何かを感じ取ったのか、面白そうにスっと目を細めて口元に笑みを浮かべ始めた。
「へぇー?”あの”冬悟がねぇ?」
『うるせぇ。』
ニヤニヤしながら見てくる快里にイラつきながら悪態をつく。
…相変わらず、勘の鋭い奴だ。
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