第57話

イライラしながら煙草を取り出そうとすれば、






「…冬悟。」






今まで興味なさそうにソファーに横になって寝ていると思ってた律希が、身体を起こしながら唐突に俺の名前を呼んだ。






『何だ。』






煙草を咥えて火を付けながらそう返せば、







「”あの子”…、何かあるのか?」






主旨が全く見えない内容の答えが返ってきた。






『何かってどういう意味だ?』





意味が分からず聞き返せば、






「…あの子、ずっと何かに怯えるように小刻みに震えてた。知られまいと必死にそれを隠そうしてたけどな。”何か”、あるんだろ?そんでお前はそれを知ってる。」






どこか真剣な表情でそう言う律希。






コイツが他人、ましてや女に興味を持つなんて珍しいな…、と思いながらふーっと深く紫煙を吐きだす。





…ほんと、勘が鋭い連中ばっかだな。






聖と快里も何も言わず俺を見てくるあたり、恐らくコイツらも何かあると気付いていて気になってたんだろう。






はぁ、仕方ねぇ…。
















――――『…あの子は、”男性恐怖症”らしい。』













それから、何で俺が探していたのかという理由も説明する羽目になったのは、言うまでもねぇ。

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