第54話
「…っ!ま、牧谷さん!お疲れ様です!」
すぐに俺に気付いた奴等は、慌てて立ち上がり頭を下げてくる。
それを適当に流し、
『さっきの話、詳しく聞かせろ。』
そう言えば、一瞬困惑したような顔をしていたが、恐る恐るといった感じで話し始めた。
「えっ、と…俺らのクラスに”心音”っていう名前の女がいるだけです。その女、超がつくほど地味なんで、牧谷さんが探してる女ではないと思いますけど…。」
『その女のフルネーム教えろ。』
「確か…、”桐咲心音”だったはずです。」
”桐咲”
その名前を聞いた瞬間、自然と口角が上がるのを感じた。
…見つけた。
そんな俺の表情を見て目を見開いて固まる奴等を放置して、すぐに溜まり場になっている部屋に向かった。
ドアをバンッ、と勢いよく開ければ、既に中にいた3人が何事かと振り向いてくる。
「そんなに急いでどうしたんだよ?」
そう聞いてくる聖を無視し、
『快里(かいり)、すぐに”桐咲心音”っていう女を調べろ。』
ちょうどパソコンを開いていた快里にそう言った。
「はぁ?今度は何?この前だって急に”ココ”って名前の女を探せって言うし、次は”桐咲心音”?だっけ?その女を調べろって…、一体何なの?」
眉間に皺を寄せながら文句を言ってくる快里。
『いいから早く調べろ。』
そんな文句を一蹴してそう急かせば、
「はぁ…、ったく。はいはい、分かったよ。」
もう何を言っても無駄だと諦めたのか、渋々調べ始めた。
…が、すぐにその表情が曇る。
『どうした?』
そんな表情にどうしたのかと思いそう聞けば、
「…調べようとしたけど、この子の情報には厳重なロックが掛けられていて調べられないようにしてある。」
『厳重なロック…?お前でも解けねぇのか?』
「まぁ、もうちょっと粘ってやってみるけど、多分無理だろうねこれは。俺には解けそうもない。」
苦虫を噛み潰したような顔でそう言う快里に、俺はふと思い出した。
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