第50話
私のその言葉に、しばらくシーンと静まり返る部屋。
気まずさと恐怖でまた顔が下に向きかけた時、
「…俺の事、覚えてるか?」
一番奥の1人掛けソファーに座っていた男の人が、そう、聞いてきた。
…覚えてる?
あれ、この声…。
その声に聞き覚えがあり、私はそこで初めてはっきりとその男の人の顔を見た。
っ…この人。
『…牧谷、さん…。』
ぽつり、浮かんだ名前を呟いた。そしてすぐにしまった、と慌てて口元を手で抑えた。
私、何やってるんだろう。名前なんて言ったら、覚えてます、って言ってるようなものだ。
思わず零してしまった私の言葉に、牧谷さんは一瞬驚いた様に目を見開きながらも、
「俺の名前、知ってたのか。」
そう聞いてくる。
『えっ、と…、友達が教えてくれた、ので。』
私は、しどろもどろになりながらもそう答えた。…実際に依里ちゃんが教えてくれたし、嘘ではない。
「…そうか。」
一言そう呟いて、それきり黙ってしまった牧谷さん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます