第43話

どうしてか気になって少し立ち止まって見ていれば、ヘルメットを外してミラーにかけながら、誰かから電話が掛かってきたのかスマホを取り出して耳に当てていた。





そしてその時に見えた顔は、遠目からも分かるぐらいには整っていたけど、その目付きは悪く鋭かった。





それに加えて、真っ赤っていう表現が正しい程綺麗に染められた赤い髪に耳には数個のシルバーピアス。




明らかに不良と分かるぐらいの見た目。




そこでハッと我に返り、関わらない様に早くここから立ち去ろうと足早に足を動かしたのだが、無意識に後ろに振り返って再びその男の人を視界に入れた。





すると、バイクから降りた瞬間、財布の様な物がズボンの後ろポケットから落ちるのが見えた。





あ、と思って男の人を見るが、電話に夢中で気が付いてない様子。





どうしよう、拾って渡した方がいいのかな。でも、相手は”不良”でしかも”男の人”。…怖い。





でも…、と心の中でそんな葛藤を繰り返している間にも、男の人はそのままコンビニに入ろうとしていた。





…一瞬、一瞬だけなら大丈夫。そう自分に言い聞かせ、小走りで落ちていた財布を拾い、





『あ、あの!』





勇気を振り絞って後ろから声を掛けた。

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