第41話

「まぁ、その格好をしてればそう簡単に気付かれる事はないでしょうけど、油断は出来ないからいざとなったら私が守るわ!」





『依里ちゃん…、ありがとう。』





どこまでも優しい依里ちゃんに、自然に笑顔が浮かぶ。





「っ…!!可愛すぎる!」





すると、そんな事を言いながら突然ガバッと抱き着いてきた。





『依里ちゃん…。』





「…私は、いつでも心音の味方よ。それだけは忘れないでね。」





私の耳元でそう小さく呟く依里ちゃんに、ありがとうと言う代わりにギュッと抱き締め返した。






それから、今日はもう教室には行かずに空き教室で過ごそうという事になり、放課後まで依里ちゃんとご飯を食べたり喋ったりして過ごした。






「じゃあね心音、また明日!」




『また明日ね!依里ちゃん!』






いつもの場所で依里ちゃんと別れ、家へと足を進める。





誰にも見つからず無事に帰れる事に一安心して、安堵の溜息を吐く。




学校を出る時に”私”を探し回っている不良達が大勢居たけど、誰も私に見向きもしないで素通りしていった。




まぁ確かにこんな地味な私があの”探されてる女”だとは夢にも思わないよね。その先入観はこっちにとっては好都合。





…やっぱり、この格好は色々と便利だ。

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