第38話

「まぁ…、いいわ。で、整理するわね。牧谷は、心音のお兄さんの後輩で、昨日家に来たと。…え、ちょっと待って。心音にお兄さんが居るのは聞いてたけど、”あの”牧谷の先輩って…、お兄さん何者?」






…やっぱり、そこが気になるよね。





別にそれは隠してるつもりなかったし…、話してもいいかな。





『えっと…、実はお兄ちゃん、この学校の卒業生なの。昔は凄くヤンチャしててね、この辺りでは結構有名だったみたいで…。それで、詳しくは聞いてないんだけど、街で暴れてた”訳アリ”の男の子達とかを拾ってよく面倒見てたらしくて、多分その中の1人だったんだと思う。その、牧谷って人…。』






そう話し終えれば、依里ちゃんは絶句した様子で目を見開き、固まっていた。




昔、真於くんから聞いた事がある。「あいつ、そういう奴等見ると放っとけねぇんだよな。」って言いながら笑ってたのを覚えてる。




お兄ちゃんから詳しく聞いた訳ではないけど、その中の1人だったんだろうなって思う。




「…はぁぁぁぁ、心音のお兄さん凄すぎだわ…。」





漸く我に返った依里ちゃんは、それはもう深い溜息を吐きながらそう呟いていた。





「まぁとりあえず牧谷が家に来た経緯は分かったわ。でも、家に来ただけなら何で心音は探されてるわけ?」





『それは私も知りたいんだけど…。』





「え、心音も分からないの?」





本当に、何で探されてるのか検討もつかない。





私が本当に分からない、という表情をしたのが分かったのか、依里ちゃんも困惑した様な顔をしている。





そしてしばらくその状態が続いた後、「あ!」と何かを思い付いた様な声を出した依里ちゃん。





『ど、どうしたの?』





私がそう聞くと、





「心音あんた…、”素顔”見られてないでしょうね?」






神妙な顔でそう聞いてくる。






私の”素顔”…?






『…そういえば、家にいる時はいつも前髪上げてるんだけど…、その日はソファーで寝ちゃっててね?目が覚めた時に目の前にその牧谷って人がいて…、』






「それよ!!!」






”その時に素顔見られちゃったかも”、って言おうとしたら、依里ちゃんの大声で遮られた。

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