第22話

しばらくじっ、と魅入ってしまっていれば、







「…んぅ……、」






小さく、苦しそうな声を出したのが分かった。







…魘されてる、のか?








「…っ…、やめ、て…。」








”やめて”?







顔を歪め、今度ははっきりそう言った。








その、今にも泣きそうな辛そうな表情に、無意識に頭に手が伸びていた。






柄にもなく数回頭を優しく撫でれば、穏やかな表情になって、小さくホッと息を吐いた。






…女の頭なんて、今まで撫でたことねぇのにな。







そんな事を思っていれば、ゆっくりと、その女が目を開けたのに気が付いた。






すぐに撫でていた手を離して引っ込める。






そうすれば、目を擦りながら身体を起こし、顔を上げた。





綺麗なくっきりとした二重と、長い睫毛に縁取られた大きい瞳。





…化粧っ気がねぇのに、目を開けたらますます綺麗に整った容姿だな。






そいつは、俺をボーッと見上げながら、






「…お兄ちゃん?おかえりなさい。私、ソファーで寝ちゃって……、」






覚醒しきれていない頭で、俺を大和さんと勘違いしたのかそこまで言いかけて、目を見開いて固まった。






どうしたんだ?と思いながら、無言で見下ろしていれば、途端にそいつの身体が震え出した。





は、何で急にこんな…。





オロオロしながらも何か言葉を発しようとしているが、パクパクと口が動くだけで何も出てこない様子。





そのうち目に涙が滲んできて、それを見て咄嗟に手を伸ばそうとすれば、ドタドタと階段を降りてくる音がした。





「ココ…!!」






そして、今まで聞いた事ない様な焦った声を出しながら、大和さんがリビングに飛び込んで来た。








「お兄ちゃんっ…!!」







その瞬間、そいつは俺を押し退け、大和さんの方に走って行く。






それを目で追えば、大和さんにきつく抱き着いていた。

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