第16話

それから、今日はもう食欲も無くなっちゃったから、もう寝ようと思い、まだ足取りがおぼつかない私を支えながら、お兄ちゃんが部屋まで連れて行ってくれた。







ベッドに横になって布団に潜り込めば、お兄ちゃんが頭をポンポンしてくれて、それにまた安心した。







「じゃあ、おやすみ、ココ。」






『ありがとうお兄ちゃん。おやすみなさい。』






もう一度私の頭を優しく撫でてから、お兄ちゃんは部屋から出て行った。








トントン、と階段を降りる音を聞きながら、思わずふぅ…、と息を吐いた。









今日は何か、疲れたな…。











それにしても、”トウゴ”って呼ばれたあの人…。パニックになってて顔はよく覚えてないけど、頭を撫でてくれた手は、優しかった…。









何だか、お兄ちゃんみたいに安心したのを覚えてる。








…でも、いくらお兄ちゃんの知り合いでも、私にとっては”知らない男の人”。






撫でてくれた手が優しかっても、それに安心したとしても、簡単に信用してはいけない。
















―――――――「簡単に、人を信用したらだめだよ…?ココちゃん。」















あぁ、もう。






消えろ、消えろ。









…また、あの憎たらしい声が頭の中で木霊する。











私は、今でもまだ、抜け出せない。














誰か、”タスケテ”―――。

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