第13話

『お兄ちゃんっ…!!』






目の前の男の人を精一杯の力で押し退け、焦った顔でリビングに飛び込んできたお兄ちゃんに思い切り抱き着いた。






ギュッと力を入れれば、それ以上の力で返してくれる。





嗅ぎ慣れた香りに包まれて、心底安心した。










「…大和(やまと)さん。」





あの男の人が、戸惑い混じりにお兄ちゃんの名前を呼んだ。





お兄ちゃんの知り合い…?





「あー…、冬悟、悪ぃが家の外で待っててくれるか?」





”トウゴ”、と呼ばれたその人は、そのまま何も言わずに出て行った。





玄関のドアがガチャン、と閉まる音が聞こえて、そこでやっと強ばっていた身体から力が抜けて、カクンッ、と膝から崩れ落ちたのを、お兄ちゃんが支えてくれる。





「ココ、大丈夫か?…ごめんな、自分の部屋にいると思ってアイツ、リビングに行かしちまった。そしたらココ部屋に居ねぇし、焦ってリビング来てみたら…、」





『私は大丈夫だよ。すぐにお兄ちゃんが来てくれたから。』





お兄ちゃんの言葉を遮りそう言えば、ホッと息を吐いたのが分かった。










…本当は、全然大丈夫なんかじゃない。





思い出したら怖くて堪らなくて、また震え出しそうな身体を抑えるのに必死だ。








…これ以上、お兄ちゃんに心配かけたくないから。

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