第93話

その中の1人、茶髪と目が合ったが、”俺は何も知らない”と言う顔をしたかと思えば、スーッと静かに目を逸らされた。





…なるほど。この状況の後始末を、こっちに全部丸投げするつもりかこの野郎。





お前の仲間だろうが、お前が何とかしろよ。と目で訴えてはみるが、見事に無視される。…覚えてろよお前。





とりあえず、この状況をどうするか…、と考えている途中で、「ねぇ、琶來!」とキャラメルから声が掛かり、無言で顔だけを向ければ。にんまりと満面の笑みをしたヤツと目が合い、思わず後ろに身を引いた。





何だコイツ、こっわ。





一瞬でそんな身の危険を感じた私を他所に、そのままの顔を崩さずに言葉を続けるキャラメル。






「何で、燐と一緒にいるのー?」






想像通りの質問だったが、思いの外どストレートに聞いてきたキャラメルに、言葉が詰まる。





馬鹿正直に説明したら確実に面倒なことになる。ということは、上手く誤魔化さなければいけない。





『…偶然、保健室に寝にきたら、先客として居ただけ。』





あの女達の件はもちろん言いたくないし、発作のことも言いたくない。よって、それらを全て省いた結果の苦しい言い訳が、コレだった。





我ながら何とも言えない言い訳だな…、と思っていれば、





「へぇー?ふーん?そうなんだぁ?」





案の定、疑いの目を向けられて、さらにわざとらしい返事が返ってくる。





そんなキャラメルに、無意識にチッ、と舌打ちをしてしまったのは仕方がないだろう。

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