第90話

――――――――――――――――――







ドンッ ドンッ



「燐ー!!いるんでしょー!?」



ドンッドンッ





『…ん…、あ…?』





ドアを叩く音と、馬鹿でけぇ声が微かに聞こえ、沈んでいた意識が一気に引き上げられる。





寝てたのか…、俺?





寝る前の記憶は曖昧で、状況を把握しようと身体を起こせば、いつの間にかベッドに横たわって寝ていたらしい。





ふと隣のベッドに視線を向ければ、うるせぇ音が響いているのにピクリとも動かずに仰向けで寝ている女。





その女を見て、あー…、と寝る前のことを思い出した。





『…つか、どんだけ寝てんだよこの女。』





チラッと時計を確認して、女に呆れた視線を向ける。





その時。ガンッ、と、さっきとは比べものにならない程の力でドアを蹴る音が聞こえた。





あ?さっきから何だようるせぇな…、と仕方なく腰を上げてドアの方へと行ってみれば、






「燐ー!!開けてよー!!」






明らかにめんどくせぇ奴の声と、ガンガンとドアを蹴破る勢いの激しい音が耳に飛び込んできて、思わず深い溜息を吐き出した。

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