第86話
同じ1階にあったからかほんの5分足らずで、無事に誰にも見られることもなく保健室に着き、ガラッと乱雑に足でドアを開けた茶髪。
そのまま中に入ったかと思えば、再び器用に足でドアを閉め、何故か鍵まで閉めているのがチラッと視界の端に見えた。
何で鍵まで閉めた?と疑問に思ったのが顔に出ていたのか、それに気付いた茶髪から、「お前、誰にもバレたくねぇんだろ?それ。」と言われる。
それ、とは、つまり”発作”のことを言っているのだと瞬時に理解する。…気付いてたのかこいつ。
違うと誤魔化すか、いや、ここで何を言っても無駄だな。それに、何を言おうにももう限界で言葉すら出てこない。
黙ってただ荒々しく呼吸している私を横目で見てきた茶髪は、何かを察したのかそれ以上は何も言ってこず、一番奥のベッドに私を降ろし、自分は隣にあるベッドに腰掛けていた。
やっと恥ずかしい体勢から解放された安心感からか、ますます酷くなってくる発作。
…これは、放っといても治まってくれる気配はないな。
それにしても薬、どこ行った?右のポケットに入れたと思ってたんだけどな…、と曖昧な記憶を頼りにしながら今度は左のポケットに手を突っ込んでみる。
やたら茶髪からの視線を感じるが、そんなものに構ってる暇はない。今はとりあえず薬だ。
すると、カサッ、と求めていた感触に触れた。
…あった。右じゃなくて左のポケットだったのか、くそ。
そんなことを思いながら、素早く薬を取り出して口に含む。そして無理やり飲み込めば、即効性だから少しだけ呼吸が楽になる。
このまま横になって、発作が治まるまでしばらく待つか…。はぁ、疲れた、ねむ。
発作が起こった後には、いつも強烈な眠気が襲ってくる。今回も例外ではなく、とてつもない眠気に襲われる。
少し我慢してみたが、結局その睡魔には抗うことが出来ず、まだ近くに茶髪がいることも忘れて、私はそのまま意識を手放してしまった。
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